カレッジマネジメント213号
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42リクルート カレッジマネジメント213 / Nov. - Dec. 2018今回の中教審の議論で注目されているのは、【教学マネジメントに係る指針の整備】という項目が登場したことだといえます。「各大学の教学面での改善・改革に係る取り組みを促していくために、必要な制度改正に加え、各大学における取り組みに際してどのような点に留意しどのような点から充実を図っていくべきか等を網羅的にまとめた教学マネジメントに係る指針を、大学関係者が参画する大学分科会の下で作成し、各大学へ示す」(下線=筆者)とされました。大学任せにしておいても社会に対する情報公開はなかなか進まず、現在も公表義務づけされている項目をさらに充実させることと、公表する際の情報の“標準化”を図ることが必要だと文科省が考えたといえます。その背景に授業料無償化が実現できたことと引き替えに情報公開を進めることへの政治的な圧力があることは否めないでしょう。図1は、教学マネジメント指針の対象と情報公開が求められる項目を整理したものです。骨太の方針で論及された項目と概ね一致していることが分かります。日本の大学には、教育の到達目標であるDPを自ら定める自律性が認められ、それを実現するためのCPやAPも自ら設定することが認められている点は、学習指導要領で標準性を求められる初中等教育とは大きく異なります。それだけに、それらの方針が実際に実現しているかを自ら評価・点検し公表する責任が伴うのです。PDCAによる内部質保証―認証評価というシステムはこうした個性的な(多様な)在り方を保証できるシステムであるはずなのですが、800近い大学の我流に任せるだけでは外部から見て“可視化”にはなっていない。そこで、テンプレートを揃えても各大学の個性を損なわない項目は“標準化”していこうというのが、今回の検討の背景だといえます。「審議まとめ(案)」では「国としては各大学が学修成果・教育成果を積極的に公開し、公開した情報に基づいた大学教育の質向上に関する取り組みが進むよう、必要な情報の把握や公表について一定の指針を示す」(中間まとめ)という「教学マネジメントに関する指針」の策定の背景・狙い表現をみると、“標準化”志向(規制強化)が強まりつつあるとみられても仕方ないでしょう。しかし同時に「審議まとめ(案)」では、「各大学が具体的に個人の学修成果や大学全体の教育成果の把握に用いることができる情報は、世界的にも標準化されたものが存在しているわけではなく、各大学が自らの大学の特性に応じて自主的に策定・開発を進めていくことが強く期待される。また、どのような情報を活用するかは各大学で自ら取捨選択するものであるが、直接的、間接的に評価・活用できる情報を含め、複数の情報を組み合せ、多元的に活用することが重要」(下線筆者)と各大学の自律性を尊重する姿勢が示されているのです。現状は“標準化”圧力と各大学の“自律性”尊重が共存した方向性になっているのです。この流れが今後どちらに加速するのかは各大学の今後の対応の仕方次第かもしれませんが、一定の“標準化”は必要とされていると思うものの、“標準化”だけでは大学の個性は隠れてしまいます。積極的に情報公開を進めてきた多くの大学にとっては“標準化”はあまり大きな負担にはならないかもしれませんが、3つのポリシーをつくりさえすればいいのだと、その実行について点検・評価を怠ってきた大学には大きな影響が出てくるかもしれません。「教学マネジメントに関する指針」に盛り込まれる具体的内容はどうなるのでしょう。ワーキングでは6月の「中間まとめ」以降、全く審議はされていません。答申でさらに具体化されることはないようです。別のワーキンググループを設けて具体的な検討は開始するようですが、本格的に内容を設定するのは次期中教審(2019年4月以降に発足か)になるようです。表1にあるのは、文部科学省がワーキングに提出した原案ですが、「骨太の方針」に沿ったものになっており※1この内容についても色々な意見が出ました。とりわけ学修成果の可視化に関する項目が弱いと筆者は感じています。教学マネジメント指針が今後定められていくうえでの課題はどのようなことになるのでしょうか。「教学マネジメントに関する指針」の具体的内容と今後の論点・課題

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