カレッジマネジメント213号
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50リクルート カレッジマネジメント213 / Nov. - Dec. 2018に授業料減免と給付型奨学金を支給するというものである。国公立大学生については授業料の全額免除(上限あり)、私立大学生については、国立大学授業料に一定の上乗せをした授業料額を減免し、さらに給付型奨学金は生活費を支援するとしている。先にふれた2017年度に創設された給付型奨学金は、完成年度でも約210億円であるから、このパッケージがいかに巨額か分かる。また、パッケージでは、これまで一部の者に限られていた入学金免除も対象となっている。さらに、これまでほとんど公的支援がなかった「家計急変」(保護者のリストラ・離死別等)にも対応策を創設する。巨費を投じ、対象を拡大した点で新制度はおおいに評価できるものである。特に、入学金免除については、日本では、入学時の初年度納付金が高すぎ、低所得層の進学の壁になっていた。また、これまで公的支援に乏しい家計急変による中退の防止のための支援策を示したことも評価できよう。しかし、現段階では詳細について不明だが、懸念がないわけではない。以下では、6月時点の閣議決定や専門家会議の報告を元に検討する。そのなかでも高等教育機関が留意すべきなのは、以下の支援措置の対象となる大学等の4つの要件である。1実務経験のある教員による科目の配置及び、2外部人材の理事への任命が複数名(パッケージでは2割以上とされていた)、3成績評価基準を定める等厳格な成績管理を実施・公表していること、4法令に則り財務・経営情報を開示していること。このなかでも、実務経験のある教員や外部理事については、これまでの大学のあり方に大きな影響を与えるものである。詳細については、本特集の文部科学省による解説を参照されたい。しかし、これらの条件を、どのような根拠で設定したのか、不明である。国民の税金を投入する以上、一定の水準の教育機関でなければならないことは理解できるが、こうした教育機関の選別は生徒の教育機会の選択を制約することになる。奨学金は個人への補助であり、個人の選択を尊重すべきである。奨学生を獲得するために、高等教育機関の間の切磋琢磨が生じることはあり得るが、最初から高等教育機関を選別することははなはだ疑問である。条件を満たさない大学や専0100,000200,000300,000400,000500,000600,000700,000800,000900,0001968196919701971197219731974197519761977197819791980198119821983198419851986198719881989199019911992199319941995199619971998199920002001200220032004200520062007200820092010201120122013201420162015(年度)(人)短大二種短大一種大学二種大学一種図3 日本育英会・日本学生支援機構奨学生数の推移(出典)日本育英会年報、JASSO年報

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