カレッジマネジメント213号
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51リクルート カレッジマネジメント213 / Nov. - Dec. 2018門学校の学生は奨学金を受給できないとすると、結果として低所得層を排除することになりかねない。学生にも十分周知しないと、進学してから授業料減免や奨学金が受給できないということにもなりかねない。アメリカでも、連邦奨学金の受給は民間の適格認定機関に合格した高等教育機関の学生のみという制限はあるが、ほとんどの高等教育機関は対象となる。これに対して、この基準では、どの程度の高等教育機関が受給資格を得るのか不明である。さらに、専門家会議では受給の対象となる高等教育機関に次の要件を加えている。「教育の質が確保されておらず、大幅な定員割れとなり、経営に問題がある大学等について、高等教育の負担軽減により、実質的に救済がなされることがないよう、支援措置の対象となる大学等の要件において、必要な措置を講じていくこととする。例えば、経営に問題があるとして早期の経営判断を促す経営指導の対象となっており、かつ、継続的に定員の8割を割っている大学については、対象にしないこと等を検討する。」今後、この提案がどのように具体化するか、注視する必要があるが、パッケージの大学等の要件については、各界から批判や懸念が相次いだ。国立大学協会、日本私立大学連合会等大学関係団体だけでなく、毎日新聞社説3月5日、朝日新聞社説3月6日等でも批判が相次いだ。また、毎日新聞調査(5月17日)でも国立大学の7割で要件に反対としている。さらに、日本経済新聞(2017年12月6日)の学長アンケートでも「大学経営への国の関与が強まる恐れ」が37%となっている。第2に、給付対象が低所得層に限定されていることである。これはこのパッケージが税と社会保障の一体改革による消費税値上げ分を原資としているため、福祉目的、なかでも少子化対策にしか用いることができないという制限による。さらに、対象者については、高校在学時の成績を支援対象者の選別に用いるとしている。しかし、純粋に福祉目的であるのであれば、成績要件を課すことは不要であろう。特に学力と所得の相関が高いため、低所得層は学力が進学のハードルになりがちである。成績要件を付せば、低所得層を排除することにもなりかねない。日本学生支援機構無利子奨学金については、既に低所得層の成績要件は外されている。また、在学中にも適格認定を行い、受給者のGPAが、下位4分の1が続いた場合、支給を打ち切るとしている。ただし、「斟酌すべきやむを得ない事情がある場合の特例措置について検討」とされており、この具体的な内容が決定されれば、高等教育機関は適格認定を主体的に実施することが求められる。さらに、給付を受けられる住民税非課税世帯と給付の受けられない住民税非課税世帯に準ずる世帯との不公平の解消について「段階的に行い、給付額の段差をなだらかにする」として、住民税非課税世帯(年収約270万円未満)、それに準ずる世帯(年収300万円未満と年収380万円未満)の3段階に分けて、授業料減免と給付型奨学金をそれぞれ全額、3分の2、3分の1給付するとしている。しかし、段階を相当増やすか(フランスは8段階)、段階ではなく連続的に減額する(アメリカ)等、うまく設計しないと、崖効果と呼ばれる、受給者と非受給者の格差が生じる。しかし、この設計は相当難しく、どのような制度にしても不公平が残る恐れがある。また、380万円を境に受給者と非受給者で所得の逆転が起きる恐れがある。こうした高等教育機関に対する要件が唐突に出てきた背景には、高等教育機関が社会の要求に応えてこなかったことに対して、新しい給付型奨学金という巨費を投じるプロジェクトによって、それらを変えようとする政策意図がある。こうした動きに対抗するために、大学や専門学校は、社会の信頼を得るために、公共性と社会的貢献を高めること、あるいは大学のアカウンタビリティと情報公開が何より求められている。国民の税金を使う以上、納税者の理解を得ることがなければ、その制度は長続きしないだけでなく、さらに後退してしまう恐れがある。各高等教育機関の一層の努力に期待したい。新奨学金制度の課題2040年に向けた将来構想の行方 Vol.2
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