カレッジマネジメント213号
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54リクルート カレッジマネジメント213 / Nov. - Dec. 2018鎌倉女子大学は1943年に設立した京浜女子家政理学専門学校を起源に、1950年より京浜女子短期大学となり、1959年より京浜女子大学を設置。1989年校名を鎌倉女子大学に変更した。短大の歴史が長く、大学設置後も短期大学部を併設してきた。併設の短大を募集停止する大学もあるが、鎌倉女子は長く保育・教育分野での実績を持つ短期大学部(初等教育学科、専攻科)を、大学と別の役割を持つものとして併存させる道を選んだ。今回ご紹介する短期大学部の入試は、まさにその立ち位置の違いを体現したものである。その名も「保育者適性型特別選抜入試」。名前が示す通り、初等教育学科で目指す幼稚園教諭・保育士の適性をベースにした、新しい入学者選抜である。大学では2017年度入試からAO入試(高大接続重視型)を導入している。評価手法と配点を公表している全国でも稀有な例で、調査書、集団討論・プレゼンテーション、小論文・面接と多彩な審査方法で、受験生を多面的に評価する入試だ。それとほぼ同時並行で短大での高大接続の在り方を検討してきたという。入試・広報センター長の河村和宏氏は言う。「大学での多面的評価と短大のそれは同じであるはずがない。本学は短大教育に接続される新しい入学者選抜を設計したいと考えました。大学ではアカデミズムに接続されるべき学力の3要素評価を軸にしましたが、本学短大は乳幼児保育・初等教育に特化したカリキュラム。卒業後に大学の児童学部や教育学部に編入する学生も一定数いますが、やはり学生の様子も大学と短大では異なる。だからこそ、大学でうまくいったことをそのまま短大に流用展開するのではなく、独自の入試の設計が必要と考えました」。本来は入学後の教育に必要な素養を測るのが入学者選抜であることを考えれば、違う教育課程の入試は異なるのが道理というわけだ。今回の入試改革の特徴は主に2つだという。1つは職業適性を評価するという点、もう1つは他学や他入試との併願が可能である点である。それぞれ見ていこう。まず、職業適性を評価する点である。出願資格にその姿勢が顕著に現れているように思われる。具体的には、①卒業後、幼稚園教諭や保育士と職業に臨む意欲・能力を職業適性と捉えるして就労することを希望する者、②高校では授業出席状況が良好で明るく前向きに活動した実績を有する者、③高校で積極的に学習に取り組み、かつ「保健体育」「芸術(音楽・美術・工芸・書道)」のいずれか1つの教科の評定平均が3.2以上の3点である。①は保育者としての目的意識、③は保育者にとっての基礎力に該当する教科の評価であるとして、特徴的なのは②であろう。河村氏は話す。「規則正しく規律正しく生活できること、決められた時間に決められたことをこなせることは、特に保育者にとって大切な適性です。専門性を身につける前に、きちんとした生活者であるかどうかを見るには、高校時代の出席状況を見るのが一番良いと判断しました」。そうした出願条件をクリアした受験生に課す選考プロセスは以下の通りである。まず出願時に「入学希望理由書」「調査書」を提出し、小論文と面接を経て評価を行う。もともと短期大学部で実施していたAO入試(自己推薦型)の審査方法である小論文と面接をそのまま使い、より多面的な要素になるよう「入学希望理由書」の内容を見直し、評価観点を加えた。各評価の配分は図に示した通り明職業教育への適性を多面的に評価する「保育者適性型特別選抜入試」高大接続の入学者選抜11鎌倉女子大学短期大学部短大ならではの多面的評価を開発

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