カレッジマネジメント213号
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58リクルート カレッジマネジメント213 / Nov. - Dec. 2018り一定の制限を設けることとしている。近年の就職率は全体として80%程度とされるが、この数値は大学により大きく異なっている。データによれば、都市部の有力大学である国民経済大学(96.4%)、ハノイ大学(93.3%)、カントー大学(88.6%)等の就職率は良いものの、地方の大学である中部のハティン大学(61.5%)、北部のタイバック大学(49.4%)では就職が困難な状況がうかがえる。ベトナムではいわゆる「新卒採用」制度がなく、企業側は即戦力となる人材や威信の高い大学の卒業生を好んで採用する傾向にある。大学入試や就職活動のほか、教育課程についてもドイモイ体制下では国家による統制が徐々に緩和されていき、現在では学長の責任のもとに全ての教育課程が大学ごとのイニシアティブで作成されるようになった。また、新たな学部や学科の開設についても、教育訓練省の決定を介すことなく自主的に設置することができるようになっている。このことから、各大学は経済や雇用機会の状況を見極めながら、大学ごとの個性・独自性を高めるような教育課程を弾力的に提供できるようになっている。多くの大学で経営学や国際法、情報学等、「市場で売れる」分野が集中的に開設されたため、こうした分野の乱立を招いている。その結果として、威信のある大学の新設学部には学生が集まる一方で、そうでない大学の場合は学生が集まらず、新設学部が翌年に廃止されるというケースも報じられている。こうした問題に通底しているのは、多くの学生を引き教育課程の弾力化付けることでいかに大学の財源を増やすか、そして大学教員の給与をいかに向上させるかという財源確保に関わる問題である。ベトナムでは、全体として物価は低いものの、教員の月給は日本円で1〜2万円程度と驚くほど安い。また公立大学の学費もおおよそ年間3〜4万円と極めて安く、大学は運営自主権が拡大するなか、それぞれが財源獲得のためにしのぎを削っている。現在ベトナムは、高等教育の質的向上のために外国の投資家や威信の高い外国大学による参入を積極的に進めてきている。そうした方策の1つとして、外国大学と連携するケースが多く見られる。近年では、フランスやドイツ、日本等の外国との連携で大学の共同設置が進んでいる。なかでも日本の協力によって設立された日越大学は、ベトナムにおける先進的な大学モデルとして発展しつつある。日越大学設置の直接的なきっかけは、2009年に第一回「日越学長会議」が開かれ、先端的かつグローバルな人材の育成を目的として、ベトナム首相により日越間の国際協力を通じて大学を設置することが提起されたことによる。これを受けて、2016年に日越大学が発足した。現在、日越大学のキャンパスはハノイ市内にあるが、将来的にはホアラク・ハイテクパークに移転予定となっている。2018年現在、日越大学は修士課程のみを開設しており、具体的には①地域研究、②公共政策、③企業管理、④ナノテクノロジー、⑤環境工学、⑥社会基盤、⑦気候変動の7つのプログラムが提供されている。各専攻では日本の大学の協力のもとでプログラムが作成されるとともに、日本人講師が多く派遣され、いずれも最先端の専門教育が展開されている。こうした専門科目に加えて、各プログラムにはインターンシップが含まれており、大学院生の就職活動を積極的に支援している点も日越大学日越間の高等教育交流日越大学第三回開講式
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