カレッジマネジメント213号
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7リクルート カレッジマネジメント213 / Nov. - Dec. 2018ション調査」の結果を紹介しよう。この調査は、 2013年時に高校2年生であった全国約400校、4万5000人を10年間追跡している調査である。以下で紹介する結果は、高校2年生から大学1年生までの変化をまとめたものであり、溝上責任編集(2018)で示されている。結果の詳細を知りたい方は、本をお読み頂きたい。本稿では、代表的な結果である図表1から、3つの主たる結果を示す。  第1の結果は、高校時(T1)の資質・能力がかなりの程度大学時(T2)のそれに影響を及ぼしていることである(.28〜.41)。別の結果もふまえれば、5〜6割の高校生はさほど資質・能力を変化させることなく、大学1年生の秋を過ごしており、残りの学生の半分は高校生から大学生にかけて、資質・能力を低下させている。大学2年生の秋までのデータを繋げて分析した結果でも、同様の結果が得られている。これらの結果は、学生の資質・能力の基盤が高校時にある程度仕上がっていること、大学生になってそう簡単に変わるものではないことを示唆している。第2に、大学時(T2)の“主体的な学習態度”は、資質・能力(T2)全てに影響を及ぼしていることである(.21〜.31)。“アクティブラーニング外化(T2)”にも影響を及ぼしている(.21)。これらの結果は、学習への取り組み方が資質・能力を伸ばすという示唆である。 第3に、その主体的な学習態度は、キャリア意識としての“二つのライフ(T2)”(.20)に影響を受け、かつそのキャリア意識(T2)は高校時の“キャリア意識(T1)”に影響を受けていることである(.32)。資質・能力を伸ばす主体的な学習態度は、高校以来のキャリア意識に影響を受けているという示唆である。大学生に授業や指導をしてきた経験から考えてみて、大学生が育たないとは考えにくい。私自身あれやこれやと取り組んできて、教育してきた、学生を育ててきたという自負もある。しかし、そこで学び成長したと感じた学生は、入学以前から学習への取り組み方や態度、キャリア意識をある程度発達させてきた学生ではなかったか。逆に、学び成長しなかった学生は、それらを十分に発達させてこなかった学生ではなかったか。必修科目でなければ、学び成長しない学生は自分の授業を受講さえしなかったことも、併せて考えられなければならない。いずれにしても、データを取っていくと、大学生がゼロベースで学び成長するわけでないことは明々白々である。この10年の大学教育改革の成果は上がっていない*パス係数が.20以上のものを太字にしている。*誤差項は省略している。また、パス係数は全てp<.001のため、それを示す記号の記載は省略している。*データとモデルの適合度はχ2(43)=103.617, p<.001, CFI=.996, RMSEA=.017であった。図表1 大学1年時の資質・能力、学習を説明するモデルキャリア意識(T1)社会文化探究心(T1)計画実行力(T1)コミュニケーション・リーダーシップ力(T1)他者理解力(T1)社会文化探究心(T2)授業外学習時間(T2)アクティブラーニング外化(T2)大学1年時(T2)高校2年時(T1)計画実行力(T2)コミュニケーション・リーダーシップ力(T2)他者理解力(T2)成績(T2)二つのライフ(T2)主体的な学習態度(T2)資質・能力 (T2)資質・能力 (T1)学習 (T2).05R2=.20R2=.12R2=.12R2=.30R2=.31R2=.26R2=.00R2=.00R2=.16.06.05.28.12.08.08-.05.05.08.07.06.15.13.10.09.21.20.23.31.30.30.41.30.23.21.32特集未来の学生を育む高校の改革

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