カレッジマネジメント213号
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8リクルート カレッジマネジメント213 / Nov. - Dec. 2018長したい」「変わりたい」「目標を実現したい」という主観的な意識を問題としてこの図表を示している。客観的に資質・能力が身についたかは横に措き、それらが「身についた」と主観的にでも評定する学生がかくも少ないことをここでは読み取ってほしい。図表3は、キャリア意識としての二つのライフの経年変化である。“見通しあり・理解実行”は学び成長する学生に特徴的なものであるが、その割合は経年変化で落ちてきている。代わりに、学びと成長が弱い学生に特徴的な“見通しなし”の割合が増えている。資質・能力やキャリア意識は、この10年の教育改革によって上がらなければならなかったものである。1990年代の半ばから大学教育改革に取り組んできて、改革の成果が上がるどころか、学生の学びと成長は失速してきている状況だともいえる。深刻な状況である。求め出せばきりがないが、高校教育にまず求める第一のことは、全教科におけるアクティブラーニングの導入・推進である。なかでもグループワークやプレゼンテーションをはじめとする対話的・協働的な学習が、仕事・社会へのトランジション(移行)をにらんで新しく求められている。その対話的・協働的な学習を通して可視化される生徒の学習や態度・能力を、しっかり育てていく必要がある。文科省的に言えば、対話的な学びを通して主体的・深い学びを育てて以上をふまえての高校教育、大学教育の課題図表1で示される数字は、大きなものであるといっても、皆が皆変わらないというほどの数字ではない。驚くほどの変身をすることは難しいとしても、大学で学生が学び成長しないとは思えない。それを言い出せば、仕事をするようになってからの20〜40代の新入社員研修や中間管理職研修等、行う意味を失ってしまう。人は成長したい、変わりたい、目標を実現したいと思って学ぶものである。データが示すのは、この意識を持つ学生と持たない学生との差であろう。高校生までこのような意識を持たなかった生徒が、大学生になって持つようになるのか、否、ならないだろう。データが示すのはこのようなことである。先般、京都大学と電通育英会で調査してきた、10年分(2007〜2016年)の全国大学生調査の結果をまとめた。結果は、『大学生白書2018-いまの大学教育では学生を変えられない-』(2018年、東信堂)として刊行されている。結果の一部を作り直して、図表2、3に示す。この10年というのは、学士課程答申(2008年)、質的転換答申(2012年)、高大接続答申(2014年)という、1990年代半ば以降の大学教育改革をいわば構造的に仕上げる改革期に当たる。三つの方針やキャリアガイダンスの法制化、アクティブラーニングや教学マネジメントもこの時期に提唱された。残念ながら、図表が示す結果は、この10年の大学教育改革が、学生の学びと成長を促すほどには取り組めていないことを示唆するものである。熱心に教育改革をしている大学や学部があること、熱心に教育を行う教員がいることは分かっているが、日本全体ではこのように言わざるを得ないのが実情である。図表2は、自己評定であるが、学生の資質・能力の身についた程度がこの10年間、ほとんど変わっていないことを示している。平均点は中点あたりで、身についたと感じる学生と身についていないと感じる学生の得点が相殺されていることが分かる。自己評定で求められる資質・能力は主観的であり、結果に信頼をおけないと批判する人がいるが、ここでは「成忍耐強く物事に取り組む力批判的思考力問題解決能力コミュニケーション力プレゼンテーション力リーダーシップ力4.003.002.001.00(1)全く 身につかなかった(4)かなり身についた2007年中点2.5点2010年2013年2016年図表2 資質・能力の経年変化(2007-2016年)
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