カレッジマネジメント214号
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12リクルート カレッジマネジメント214 / Jan. - Feb. 2019大学のアドミッション・ポリシー(以下、AP)に即した個別入試の改革が進んでいる。小誌では連載「高大接続の入学者選抜」で、大学独自の様々な取り組みを紹介してき昨今の入学者選抜改革は時期により3つの区分に分けられる(図1)。まずは、自校の教育と相性の良い学生を獲得する仕組みを、国の高大接続議論より以前から講じてきた大学である(図1の①)。先行事例とも言うべきその内容は、教育内容に照らして学力以外の要素をいかに評価するかに注意を向けているものが多い。例えば国際基督教大学(ICU)は従前より入学後の教育への適性を測る目的で「リベラルアーツ適性」を一般入試の評価手法の一つに設定していた。2015年よりATLASと改称し、ICUの教育の特徴である「ダイアログ」=対話型教育に対応できる「聴く力」と、多様な趣旨の設問に対応できる広い知的基盤を持つかを問う形式に進化させている。慶應義塾大学湘南藤沢キャンパス(SFC)の環境情報学部・総合政策学部では、1990年設立と同時に国内初のAO入試を導入し、学力だけではなく「独自の着眼点や経験値があるか」を問うた。九州大学の旧21世紀プログラムは2018年に共創学部へと発展改組したが、AO入試では従来同様に、講義・レポート・ディスカッションで2日間をかけて丹念に受験生の思考力等を問うプロセスを設計している。これまでは「対策がしにくた。また、2017年11月発行の207号では当時の入学者選抜改革の動向を示した。本稿ではそれ以降の動きを踏まえ、これまでの分析と2019年度の動きを俯瞰したい。い」「併願が難しい」とされてきたこうした学校群が、現在脚光を浴びている。①の大学群は、敢えて言えば、とりたてて「入学者選抜改革」というもの自体に目新しさは感じていないであろう。教育に強い独自性を有し、その教育を提供する対象を入学者選抜によりフィルタリングすることで適性の高い人材を選抜し、育成輩出することでさらなるブランド力につなげているとも言える。次に、2020年に向けて体制を整える動きである。これはまさに文部科学省の議論のスケジュールに合わせた検討であり、大学入学希望者共通テストの運用が開始される2020年を見据えた個別校改革である(図1の②)。例え2020年に向けてPDCAを回す第2陣カレッジマネジメント編集部鹿島 梓入学者選抜改革の動向第1章 時系列で入学者選抜改革を俯瞰する独自性の高い教育と入学者選抜によるフィルタリング高大接続の入学者選抜特別編図1 入学者選抜改革の時系列別特徴・近年の高大接続改革議論前より実施・教育の独自性から入試でフィルタリング実施・概ね2015年頃~・2021年度に向けてPDCAを回すタイミング・概ね2024年頃・高校の学習指導要領改訂と同タイミング
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