カレッジマネジメント214号
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13リクルート カレッジマネジメント214 / Jan. - Feb. 2019特集 入学者選抜 改革の現状ば、2016年に推薦入試を導入した東京大学、同年に特色入試を導入した京都大学、2017年に従前のAO入試を改革してAO入試(高大接続重視型)を開始した鎌倉女子大学、2018年に入学後のアクティブ・ラーニング型授業に対する適性を測る意味合いでPASCAL入試を導入した創価大学、同年に高大接続入試を導入した中京大学等が挙げられる。筆者はこれまで、小誌連載の「高大接続の入学者選抜」で全国の入試改革を取材してきたが、②の大学群でよく聞かれるのが、「センター入試が変わるタイミングまでに新しい入学者選抜の学内議論を進め、現場のPDCAサイクルをある程度回しておく必要がある」という趣旨の言葉だ。学部教育の内容に照らし、本来問うべき資質能力をどのように位置づけるか。それを評価するにはどんな方法が適切か。実施体制や運用面での課題は何か。評価者の育成をどうするか。世間では共通テストの試行テストに注目が集まっているが、個別の大学に閉じた話であっても、入試という一大事業において、現場検証すべき課題は多い。最近多くお問い合わせいただくのが、「大学別の入試でも記述式はやらなければいけないのか」「面接だけでは多面的評価とは言えないのか」といった、評価手法に関する内容である。どの入試方式でも思考力・判断力・表現力等を問うべしとの趣旨を鑑み、評価方法は何を置くのが最適なのか。それは各大学の判断によるが、こうした質問には現場の戸惑いが端的に表れているように感じる。理念は理解できても、やはり「公平性」「公正性」の観点から、1点刻み評価でなくなることの運用面での負担は大きい。しかし、一度現場でサイクルを回しておけば、自校で取り組むべき内容や注意すべき点が見えてくるのであろう。また、大学入学者選抜実施要項に照らし、大きな入試変更は概ね2年前を目処に公表するべしという通称「2年前ルール」に則り、2021年度入試の方針を公表する大学も出てきている。本号の事例校で取り上げているのが一例だが、「共通テストを使うか否か」「英語四技能の扱い」「記述式をどうするか」等に注目が集まる。ただし、その実は「学力の3要素育成をどのように行うのか」という各大学の教育スタンスを示すものであり、方法論のみの議論になりがちな現状はまだその本質を突く大学が決して多くはないことの裏返しでもあるだろう。遅くとも今年度末までには情報開示が進むものと思われる。最後に、2022年度より年次進行で始まる高校の新学習指導要領を受けた高校生が卒業するタイミングの、2025年度に向けた動きである(図1の③)。既に小学校から導入が進む新学習指導要領の高等学校における目玉は「探究」「主体的・対話的で深い学び」「カリキュラムマネジメント」等であり、科目変更のみならず、教育者主体から学習者主体へのスタンス変更が強く押し出されている。生徒が「何ができるようになるか」を軸に展開される高校の授業は、大学での教え方や学生指導の方針に多大な影響を及ぼす。当然入試の在り様も変化せざるを得ないだろう。今回事例校として取り上げた早稲田大学の記者会見でも、「2025年度以降を見据えて2021年度からの期間を捉える」という内容があった。段階的に細かくチューニングしていく必要があるということであろう。小誌213号でも特集したが、既に高校は変化しつつある。全国の高校で変化が確実となるタイミングに合わせていく動きは合理的だが、実務に大きな影響を及ぼす入試関連システムの変更は1回に留めたいという現場運用面からの都合も大きいようだ。筆者の主観としては、段階的に変化している高校の状況をそれで受け止めきれるのかは疑問である。学習指導要領改訂に向けた改革では手遅れか第2章 入学者選抜改革を評価観点から4象限に分けて俯瞰する編集部では、前述したタイミングによる違いのほかに、これまでの取り組みの内容から分類を試みた。検討の結果、2つの軸で4象限に分類し、それぞれの象限でどのような特徴があるかを考察した(図2)。なお、図が似ているが、207号「多様化する入学者選抜の現在」で示した4象限とは別のものである。評価の全容は非公表が多い現状

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