カレッジマネジメント214号
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15リクルート カレッジマネジメント214 / Jan. - Feb. 2019特集 入学者選抜 改革の現状センター試験を組み込んでいる大学が多いが、センター試験の配点は公表していても、入試全体の合計点は公表がないというケースも多々ある。その場合は各評価手法をそれぞれどの程度重視しているのかを見ることはできない。国立で配点を公表しているのは大阪大学の世界適塾入試、東北大学のAO入試、島根大学の地域貢献人材育成入試、長崎大学多文化社会学部の一般入試(批判的・論理的思考テスト)等がある。センター試験をどのように見るかは概ね共通しており、学力配分が高い選抜型である傾向が強い。翻って私立大学を見ても公表は進んでいるとは言い難い。公表しているのは鎌倉女子大学のAO入試(高大接続重視型)、広島修道大学のAOインターアクション入試、広島工業大学のAO入試、女子栄養大学のアクティブ・ラーニング入試等がある。では、図2の各象限について具体的に見ていこう。なお、例示は要綱等を見て総合的に判断している。校風・風土への適性評価や目的意識の確認等を中心に、複数回の接触やガイダンス等を通じて受験者を育成していくタイプの入試。評価方法は面接等の対面評価が多く、教職員との対話を通して相互理解を深める、企業採用面接に近い形となる。例)九州産業大学育成型入試知識・技能評価比重が高い一方、学部学科に関する興味関心や志願度合いを確かめる等の理由で複数回接触を行うケース。学力を重視しつつも評価方法が多様で、書類を含め複合的に受験者を分解する、丁寧な入試設計が多い。偏差値上位校で入試時点での人材の多様性確保・牽引人材確保のために設けられている特別入試等も概ねこの象限に含まれる。多面的評価はマッチング型、学力重視は選抜型象限①:育成型接触回数多×学力評価比重低象限②:マルチ選抜型接触回数多×学力評価比重高例)九州大学共創学部AO入試、お茶の水女子大学新フンボルト入試学力以外の要素評価を重んじるが、何度も接触して深くコミュニケーションを重ねるというより、入試本番での対面評価を重視するケース。評価方法は面接が中心。または、予めIR等により特定の素質がある人材が入学後成長するというファクトを持つ場合に、それに絞った評価を行うものもある。知識・技能を重視する上位総合大学で多いケース。特に研究型大学においては複数要素評価を行っていても評価枠内での基礎学力の配点が高く、この象限に配置される傾向が強い。例)東京大学推薦入試当然のことと思われるかもしれないが、今回分析で見えてきた重要な観点は、「その大学(学部学科)のカレッジ・レディネスは何か」という点である。従来、大学は自ら目的意識を持ち、自律的に学ぶ必要があるとされてきた。自ら学ぼうとする姿勢だけではなく、「読む」「調べる」「まとめる」といった学習技術の習得や、「深く考えて自らの論を立てる力」が獲得できなければ、体系的に学問を修めることは難しい。そんな状況の中、高校は現実的には大学入試の対策を講じる必要があり、「入試の準備はできていても大学教育への準備はできていない」という状況が多発した。それが、小誌213号でも特集したように、学習指導要領改訂を見据え、既に高校現場は変わり始めている。では、大学はどうであろうか。旧学力=知識・技能は、多くの大学にとっては変わらず大学教育の基礎であろう。ただ、学力だけで評価するのではなく、様々な要素の評価を追加して多面的にすることが必要だと言われている。その際避けて通れないのが、カレッジ・レディネスという観点だ。大学教育に必要な要素は何か。従来は知識・技能に偏っていたが、象限③:面接重視型接触回数少×学力評価比重低象限④:知識技能重視型接触回数少×学力評価比重高

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