カレッジマネジメント214号
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16リクルート カレッジマネジメント214 / Jan. - Feb. 2019例えば、ゼミ形式の授業が多いので議論に参加できる主体性と傾聴力が必要である、実習が多いので対人スキルが低いと困る、研究大学として資料をたくさん読める解読力や集中力が欲しい等、大学によって事情は異なるであろう。また、その中には入学後育めるものもあれば、高校までに育んできてほしいものもあるだろう。問わ最後に、直近の2019年度入学者選抜の動向に視点を移したい。大きな変化を目前にした2019年度の入学者選抜改革は全体的に控えめだが、そんな中にあって改革を断行している2大学をご紹介したい。明治大学(以下、明治)で英語四技能活用が進んでいる。2017年度経営学部が一般選抜入試で、政治経済学部が特別入試でそれぞれ外部試験を取り入れた四技能型を導入したのを皮切りに、翌年は商・国際日本学部の一般選抜入試で活用が始まった。2019年度は農・経営・国際日本・総合数理学部の全学部統一入試で外部資格試験のスコア活用が始まる。前経営学部長で入試改革担当副学長の牛丸教授は、「受験生が12年連続10万人を突破し10学部を擁する総合大学で、全学部が足並みを揃えるというのはなかなか難しい。まずは積極的な学部が改革を先導する形で進んでいます」と話す。また、学部により規模感は異なるが、四技能型試験を活用する受験生が適合しやすい教育プログラムが配置されているのも特徴的だ。例えば、経営学部で設置されているGREAT(Global Resources English Applied Track)は、経営学を英語で学ぶことで英語力と専門知識を同時に修得する高度なカリキュラム。国際日本学部は英語学位プログラムを持つほか、「日本を海外に発信できる人材を育成する」という学部設置趣旨からも、四技能は親和性が高い。「いずれ全学的に英語学位プログラムを整備するという構想もあります」と牛丸副学長は言う。留学生であれ日本人学生であれ、明治の教育プログラムを受けられる体制を整備し、国際的な教育全学的な国際化を背景に英語四技能活用を進める明治大学拠点となる。そうした構想の背景にあるのは、2014年に採択されたスーパーグローバル大学創成支援事業(以下、SGU)であるという。「明治は学生の主体的学びを育み、未来開拓力に優れた人材を育成するべく国際化を進めています。教育の国際化を進めれば、高校教育との接続観点からも入試が変わるのは道理でしょう」。入試検討では各学部の意見要望を優先し、学部教育に必要な資質能力の一つとして英語を捉える。独自の作問で英語力を測る大学もあるが、明治は物差しとして外部試験を積極的に活用する。「現状改革が進んでいる学部は概ね英語を『技能』として捉え、国際的な教育を受ける準備ができている人を四技能で選別するプロセスを設計しています。だから外部試験は目的に合致していると言えます」。なお、商・政治経済学部では入試の出願資格として所定のスコアを提示し、経営学部では外国語試験免除とスコアに応じた得点加算、国際日本学部では所定のスコアをクリアすれば外国語試験が満点換算される等、活用の仕方も学部により異なる。2019年度からは一般型との併願施策もいくつか講じており、学部自治を重んじながらも、大学経営の安定とSGUのビジョン実現が文部科学省施策と符合するように統合されている。東京都市大学(以下、都市大)はIRによるエビデンスを改革の基軸としている大学の一つだ。募集面における課題を、入試部の菅沼直治部長はこう話す。「本学のAO・推薦入試による入学者は全体の約2割でした。大学入試のトレンドと自大学のポジションから冷静に判断して、まず教育接続を重視し多様な改革を展開する東京都市大学第3章 移行期間の2019年度改革れているのはそこだ。本来どんな資質能力が必要な学びなのか。その資質能力を実績により判断するのか、入試の中で問うのか、入学後教育を用意するのか。どうすれば大学で花開かせ社会につなぐことができるのか。そうした視点での設計や教育開発が必要であろう。

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