カレッジマネジメント214号
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18リクルート カレッジマネジメント214 / Jan. - Feb. 2019今日、ICTをはじめとする技術の発展やグローバル化の進展等により、国内外の社会変化のスピードは極めて速く、先行きを見通すことが困難な時代になっている。この度の高大接続改革は、このような中にあって次代を担う人材の育成において、様々な分野における「知識・技能」だけではなく、混とんとした状況の中に課題を発見し答えを見出して他者に伝える「思考力・判断力・表現力」、さらには独自の個性を積極的に発揮するとともに他者の多様性を尊重して「主体性を持って多様な人々と協働して学ぶ態度」という、いわゆる「学力の3要素」を重視することを基本理念としている。そして、この基本理念に基づき、高等学校教育、大学入学者選抜及び大学教育の各段階を通じて三位一体の改革を行おうとするものである。高大接続改革というと、ともすれば入試改革だけに関心が向けられがちであるが、これは忘れてはならない重要な点である。高等学校教育においては、情報教育、英語教育、アクティブラーニングの充実などを含む2022年度からの新学習指導要領実施に向けた準備が進められている。大学教育においては、アドミッション、カリキュラム及びディプロマの3つのポリシーの策定等を行ったところであるが、より基本的な大学教育改革がまさに進行中であり、この点については最後に触れることとする。国立大学協会は、こうした改革の基本理念には当初から賛同しつつ、特に入学者選抜の改革における具体的な制度設計については、大学、高校等の理解を得ながら、受験生に大きな不安や混乱を与えることなく、実効性のある改革を着実に実現するという視点から、随時意見を述べてきたところである。今回の改革に触れる前に、まず、現状を簡単に整理したい。国立大学は、それぞれのアドミッション・ポリシーに基づき、一般入試においては、基礎的・基本的な教科・科目についての幅広い学習の達成度を測る共通試験(大学入試センター試験)と各大学の実施する個別試験の組み合わせにより、適切な選抜を行うよう努めてきた。個別試験においては、記述式・論述式問題により論理的思考力・判断力・表現力を問う学力検査を行うほか、募集単位の一部で意欲、適性等を幅広く評価するための面接、小論文、実技試験等を課している。また、個別試験の日程は、前期日程と後期日程に分離し、募集人員をそれぞれに分割するという分離分割方式を採用しており、複数の受験機会を提供するとともに、各大学・学部等における選抜方式の多様化と評価尺度の多元化を促進している。また、近年は、推薦入試やAO入試を導入する大学も増えており、さらに国際バカロレア入試や社会人、留学生等を対象とした特別選抜等、多様な選抜方法を活用して、多様な個性・資質を有する入学者の確保に努めている。(図1・図2参照)国立大学の入学者選抜の概要国立大学協会 常務理事・事務局長木谷雅人高大接続改革における国立大学の入学者選抜の方針について高大接続改革:三位一体の改革寄稿

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