カレッジマネジメント214号
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21リクルート カレッジマネジメント214 / Jan. - Feb. 2019もに、個別試験において、全受験生に対して高度な記述式試験を課すこととしている。例えば、複数の素材を編集・操作し、自らの考えを立論し、さらにその過程を表現する能力を評価する問題であり、実施する教科・科目を含め、その具体的内容・方法は各大学・学部等に委ねられるものである。②調査書等の活用基本方針では、各大学は、それぞれのアドミッション・ポリシーに基づき求める人物像や能力等を踏まえ、高等学校における学習活動や課外活動等の実績及び学習意欲等を含めた能力や態度を評価するため、調査書や志願者本人が記載する資料、面接等を活用する方法を検討し、実施可能なものから順次導入していくこととしている。今後、調査書等の電子化や活用システムの構築などの動向を踏まえつつ、さらに具体的に検討していく必要がある。③分離分割方式現行の分離分割方式は、前述のように複数の受験機会の提供や選抜方式の多様化等に大きな役割を果たしてきた。最近では、AO入試・推薦入試を含めた募集人員の分割などもできる弾力化措置も講じている。このため、基本方針では、少なくとも2023年度までの間は、現在の方式を維持することとした。一方、将来的には、AO入試・推薦入試等の普及状況を見つつ、丁寧な入学者選抜を実施するために十分な選抜期間を確保する必要性にかんがみ、個別試験の実施時期の一本化も含めた実施時期のあり方について、引き続き検討することとしている。前述のように、国立大学は、一般選抜以外にAO入試や推薦入試などの多様で個性的な入学者選抜の導入を進めており、国立大学協会においても、2015年に公表したアクションプランにおいて、AO入試と推薦入試の占める割合を入学定員の30%とすることを目標に掲げた。基本方針においても、総合型選抜(AO入試)及び学校推薦型入試(推薦入試)などの丁寧な入学者選抜の取り組みを加速・拡大するとともに、それにより蓄積されていく経(3)総合型選抜・学校推薦型選抜について験とノウハウを一般選抜にも波及させていくこととしている。基本方針の各項目でも触れたように、2020年度の改革実施に向けて、当面解決しなければならない課題も多く残っている。既に各大学は、いわゆる2年前予告により基本的な枠組みを示しているが、詳細は今後示すこととしている大学が多く、受験生への配慮からできるだけ早く明らかにしていくことが必要である。また、基本方針では、継続的な検討が必要な事項として、アドミッション・オフィスの整備とアドミッション・オフィサーの育成という大学の体制のあり方、入口管理から出口管理へ転換を図るための入学定員管理のあり方、グローバル化の進展に伴い外国人留学生の受け入れを大幅に拡大するための選抜のあり方を挙げており、これらも引き続きの検討課題である。最後に、大学教育改革自体の動向に触れておきたい。将来の我が国のあるべき姿を見据えて、国立大学協会は2018年1月に「高等教育における国立大学の将来像」を提言しており、中央教育審議会においては同年中に「2040年に向けた高等教育のグランドデザイン」の答申を取りまとめることとしている。これらにおいては、これからの大学教育において、持続可能な開発のための目標(SDGs)、人生100年時代、Society5.0と第四次産業革命、グローバリゼーション、地方創生等を踏まえ、各学問分野における高い専門性を育むとともに、数理・情報を含む新しいリテラシーの教育、大学と地域・産業界等との連携による実践的教育、文理横断型の教育、リカレント教育、国際交流教育等を充実していくという方向性が示されている。各大学は、このような中で、それぞれの強みや特色を生かしつつ社会の要請に応えるため、学部・学科等の再編・新設やカリキュラム改革等の個性的な教育改革に取り組んでいる。受験生や高等学校関係者におかれては、入学者選抜制度だけではなく、ぜひこのような教育改革の状況にも目を向けて頂き、各人の能力・適性に適合しさらにそれを伸長させる大学選択に役立てて頂きたいと考えるものである。今後の課題特集 入学者選抜 改革の現状

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