カレッジマネジメント214号
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22早稲田大学(以下、早稲田)は、1882年に大隈重信によって創設された東京専門学校を前身に、1920年に大学として認可を受けた日本最初の私立大学の一つである。「学問の独立」「学問の活用」「模範的国民の造就」を建学の本旨とし、進取の精神や在野精神をその校風とする。東京都新宿区に位置する早稲田キャンパスを中心に10カ所のキャンパス、教員組織として10の学術院(専任教員1992名)、教育組織として13学部、20研究科(専門職大学院5専攻含む)を設置し、学部在学生4万1051人、大学院在学生8385人の約5万人が在学する言わずと知れた大規模大学で、一般・センター利用入試による学部入学定員5555人に対する総志願者数は11万7209人である(2018年時点)。入試改革の方向性が注目されるなか、早稲田は、2018年6月に高大接続改革への対応を含めた2021年度の方針を発表した。その内容は図1に示した通りだが、これらは報道等でも広く紹介され、大きな社会的関心を集めた。その背景や意図について、2013年から入学センター入試開発オフィス長として中心的役割を担う沖清豪教授にお話をうかがった。「国の高大接続改革の議論は急速に進みましたが、早稲田では10年前から入試制度の議論をしてきました」と沖教授は話す。早稲田は2012年に、創立150周年(2032年)にWaseda Vision 150に位置づけられた入試改革向けた中長期計画「Waseda Vision 150」を策定し、「アジアのリーディングユニバーシティ」として世界へ貢献する大学であり続けるため、教育・研究の質的向上を図るための具体的方針を定め、大学全体の改革を進めてきた。「Waseda Vision 150」では、「世界に貢献する高い志を持った学生」「世界の平和と人類の幸福の実現に貢献する研究」「グローバルリーダーとして社会を支える卒業生」「アジアの大学のモデルとなる進化する大学」という4つのビジョンが示されており、それらを実現するために「入試戦略」「教学戦略」「展開戦略」「経営戦略」という4つの戦略の大枠と、それらに基づいた13の核心戦略を定めている。「入試戦略」では、「入試制度の抜本的改革」が核心戦略として位置づけられている。このような中長期的ビジョンに基づいた早稲田大学の入試改革については、小誌204号において、「中長期ビジョンの中核に位置付けられた新思考入試」として取り上げた。そこでは、入試改革を進めるために新設された「入試開発オフィス」を含む入学センターの組織体制等を紹介した。早稲田において入試改革は各学部が独立して進めるものであり、入学センターは各学部の入試改革・開発に協力するとともに、全学的な方向性を提案する役割を果たしている。近年の動きとしては、2018年度から文化構想学部・文学部・商学部・人間科学部・スポーツ科学部において導入された「新思考入試(地域連携型)」がある(2019年度からは法学部も対象)。この「新思考入試(地域連携型)」は、入学後、所属学部の学びに加え「地域への貢献」をテーマとしリクルート カレッジマネジメント214 / Jan. - Feb. 2019あるべき大学像を見据え教育改革と入試改革を連動させる入試開発オフィス長 沖 清豪 教授早稲田大学1

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