カレッジマネジメント214号
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23た全学共通の活動を行うことで、出願に至った志を入学後の学びにつなげる「高大接続」型の入試制度として開発されたものである。そのほかに、基幹理工学部で2018年度から、北九州地域の高等学校を対象に指定校推薦と北九州キャンパスでの教育研究を連動させた「新思考入試(北九州地域連携型推薦入試)」を導入している。こうした新しい入試で試行を重ねながら、全学としての方向性を練っているわけだが、2021年度の入試改革は、この中長期計画による入試改革の延長線上にあるものである。2021年度の入試改革概観を図1に示したが、まず全学出願要件として、「主体性」「多様性」「協働性」(以下、主体性等)に関する経験の記入を求められることになった。これは学力の3要素評価に対応するものである。「“学力 の3要素”を入試で見ることは本来のあり方であり、Waseda Vision 150にも沿ったものです」と沖教授はその位置づけを説明する。もちろん、これまでも推薦入試を中心に多面的評価を行ってきた。早稲田では、一般入試・センター利用入試での入学者とAO・指定校推薦といった多様な入試の入学者の比率は5.5:4.5と、前者が多い。他方、GPA等の検証結果からは、推薦入学者の質の良さは証明される一方で、多数を占める一般入試入学者には、何をどのように求めるべきか課題となっていた。こうした検討のなかでは、いくつか議論のポイントがあったという。主体性等を見るための具体的な方法として、まず考えられるのは調査書の活用であろう。しかし、次のことから調査書の活用は採用されなかった。第一に、早稲田の一般入試は、出願締切が1月末、各学部の入試日は2月8日~22日と長期にわたり、また、1学部で1万人規模の受験者がある。このスケジュールと量的規模のなかで、受験生の調査出願要件としての「主体性」書を読んで事前に評価することは時間的に不可能である。また、現状の調査書はフォーマットは揃っているが学校や担当教員によって記載内容に差が大きく、評価に用いることは難しいという学内の指摘があった。さらに、もし早稲田が一般入試で調査書評価を入れるとなると、高校側には生徒ごとに出願部分の所見を書く手間を追加で求めることになり、混乱を招きかねない。高校現場の負担増となるやり方は極力避けたい。他方、国の高大接続改革のなかで検討されているeポートフォリオを、早稲田の受験者数の規模で使うには時期尚早と判断された。特に受験生の1%(約1000名)を占める高卒認定による受験生や国外での教育を経験してきた受験生は調査書もeポートフォリオもない状態であり、それを加点要素とするのは公平性を欠く。そこで、web出願時に、主体性等を発揮した経験や取り組みを受験生に自分で書いてもらうこととしたのである。記入を出願要件とするが、得点化はしない。具体的なイメージとしては、オンライン出願システムに項目を増やし、記入がないものは出願手続きができないなどシステムにおいて対応することが想定されている。そこに記載される内容をどのように利用するかは各学部に任されている。ただ、「全学共通の方針としては、この主体性についての情報を入学後教育に活用していく」と沖教授は話す。Waseda Vision 150に基づいて教育改革が進められるなかで、早稲田では、今や84%の授業が50名リクルート カレッジマネジメント214 / Jan. - Feb. 2019特集 入学者選抜 改革の現状対象学部等主な変更点全学部共通一般選抜(現行の一般入試)及び大学入学共通テスト(現行の大学入試センター試験)を利用した入試の出願要件を変更し、Web 出願時に、「主体性」「多様性」「協働性」に関する経験を記入政治経済学部一般入試について、大学入学共通テスト、英語外部検定試験、学部独自試験(日英両言語による⻑文を読み解いたうえで解答する形式)の合計点による選抜に変更。大学入学共通テストでは、①外国語(英語・独語・仏語のいずれか1つ)、②国語、③数学I・数学A、④選択科目(地理歴史、公⺠ 、数学 、理科)の4科目国際教養学部一般入試について、大学入学共通テスト、英語外部検定試験、学部独自試験(英語)の合計点により選抜する方式に変更。大学入学共通テストでは、①国語、②選択科目(地理歴史、数学 、理科)の2科目スポーツ科学部現行の一般入試、センター利用入試[センター+一般方式]に当たるものを、大学入学共通テスト、学部独自試験(小論文)により選抜する方式に変更 ほか図1 早稲田大学の2021年度入試の主な変更点

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