カレッジマネジメント214号
26/56
26西南学院大学(以下、西南)は、1916年、米国人宣教師C.K.ドージャーによって設立され、キリスト教を教育理念の根幹に置く、学生数8300名を超える7学部13学科からなる文系総合大学である。同大学では2019年入学者選抜において、総合型選抜として新たな学力の3要素を問う入試を実施している。志願者数も多く、九州地区の私立大学ではほとんどの文系分野で偏差値もトップクラスの同大学で、いち早く入試改革の実施に至ったのはなぜなのか。その取り組み内容や目的等について、入試センター長・文学部教授の藤本滋之氏、副学長(取材時点は経済学部長)の立石 剛氏、入試部事務部長の三苫正淳氏にお話をうかがった。大学の教育にあった学生を受け入れるという問題認識は常にあったが、今回の変化のきっかけは、2017年7月13日に文部科学省が入試制度改革に対する基本方針を示したことだ。2020年から入試種別が一般選抜、学校推薦型選抜、総合型選抜に変わるが、総合型選抜はこれまでの制度の公募型推薦、AO入試に近いので、入試課が、そうした入試を実施している学部に議論を投げかけ、2年先がけて今年度から総合型選抜という名称に変えようという提案にどの学部も賛成した。2019年度入試の総合型選抜の実施状況を表1に示した。2019年にはまず5学部で先行して実施し、2020年から商学部の入試も公募型推薦制度を廃止して、総合型選抜入試を導入することが決まっている。専門能力重視型、英語4技能重視型の2方式で、合計28名程度を選抜する予定だ。文部科学省の言う学力の3要素をどのように測るかの議論を各学部で進めた結果が、こうした選抜方法に表れている。学部・学科によって具体的な方法は少しずつ異なっているが、小論文試験、面接試験、2019年度入試から総合型選抜入試を先行導入講義に基づく試験、提出書類等を用いて、総合的に学力判定を行う内容となっている。西南が総合型選抜の入試改革にいち早く取り組んだと聞いて、筆者は正直なところ、やや意外だった。同校は定員割れとは無縁であるし、各種のデータを見る限り、学生選抜で大きな課題が見えなかったからだ。図1、2には、このあと中心的に取り上げる経済学部と文学部について、志願倍率と歩留率と、入試方法別の入学者割合を示した。図1を見ると、2018年はどちらの学部も11倍の志願倍率、31%の歩留率となっており、この何年かで大きな変化はない。2017年に経済学部では60名、文学部では50名の入学定員増を行い、志願倍率は多少落ちたものの、それでも高い志願倍率を維持している。入試方式別の推移をみると、年によって多少の増減はあるが、一般入試の割合が70%台から61%まで下がっており、経済学部の場合は指定校推薦、文学部の場合は公募型推薦が特に伸びている。入学者の質と量を一定水準に保つために、入試方法を変更する等して対応してきたことは分かるものの、図1や同校の偏差値の動向を見る限りは、特に大きな変化があったように見えない。実際に、新しい入試を始めることを伝えると、高校の教員等学外からは、「西南さんはそんなことしなくてもよいのでは」と言われることもあったそうだ。リクルート カレッジマネジメント214 / Jan. - Feb. 2019ボトムアップでの入試・教学一体改革入試センター長・文学部藤本滋之 教授副学長立石 剛 教授事務部長三苫正淳氏西南学院大学2
元のページ
../index.html#26