カレッジマネジメント214号
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277学部の中でも、最も積極的に検討をしたのが経済学部であった。「学びと探究型」と「活動実績型」の2つの方式で、それぞれ10名程度を募集する。その概要は表1に示した通りだが、基本的には学力の3要素に従って考えたという。「基礎的な知識・技能」については、現在のところそれを統一的に測る全国的な試験がないため、今年は評定平均で測ることにした。評定平均4.0に対して少し厳しめという意見も出されたが、ほかの測定基準がないのでまずは試行してみる。「思考力、判断力、表現力等の能力」いわば「応用する力」については、講義に基づく試験で測ることにした。経済学を知らない受験生に対してその場で経済学部の教員が必要な知識を分かりやすく教えて、理論ツールと様々な状況を説明するデータを示して、「あなたならどう考えますか」と問う。それでどこまで測れるかは別問題だが、事前学習がなくても対応できるような思考力を測る。「主体的に学習に取り組む態度」については、面接により評価する。これまでの面接では教員がその場で思いついた主観的な質問をしていたが、一定の基準を設けて、これまで何をしてきたのか客観的に判断できる行動のみを尋ねる。工夫する力があるか、苦労して成長したのか等、事実を確認するヒアリングを行い、経済学部で総合型選抜入試─「学びと探究型」と「活動実績型」段階付の評価をする。こうした方法に変更することで、考えて行動できる人、自分のために主体的に科目を選べる人を選抜するのが狙いだ。立石教授によれば、入試課から新しい入試制度に変わるという議論のきっかけをもらい、学部内で当初は否定的な意見もあったが、実現へと進んだのには3つの要因があったという。第一は、現在の公募型推薦が、入学時のばらつきが大きく、平均的にGPAが低い等の状況から、必ずしも有効に機能していないのではないかという意見が教員の中から出始めたこと。第二は、学生の学びの意識に対する問題意識。最近の学生は学びの体系やキャリアを考えず、単位の取りやすさで履修科目を選ぶ傾向があるが、自分で必要な科目を考えて選んで学べる学生を取りたいという議論が出始めた。第三は、国公立大学でAO入試の導入が進み、高校もその対策を始めつつあるという外部要因。推薦入試と違い、総合型選抜では募集人員に対する制限がなくなるが、九州地区は18歳人口の減少も激しく、何の手も打たないと、競合校である地方国立大学に入学者を奪われるのではないかという危機感である。こうした課題意識が学部内に共有され、新しい入試に対して早めに対処し、良い学生が取れる訓練を始めようという流れになった。リクルート カレッジマネジメント214 / Jan. - Feb. 2019特集 入学者選抜 改革の現状(注)2019(平成31)年度総合型選抜入学試験要項より筆者作成(注)『大学の真の実力』(旺文社)各年度版より筆者作成(図2も同様)志願倍率(左軸)=入学志願者数÷入学定員 歩留率(右軸)=入学者総数÷合格者数×10005101520253035201820172016201520142013201220110246810121416(倍)志願倍率歩留率(%)図1 経済学部・文学部の志願倍率と歩留率文学部・志願倍率経済学部・志願倍率文学部・歩留率経済学部・歩留率入学定員の変更経済学部 300名→360名文学部 250名→300名学部学科・専攻募集人員選抜方法神学部神学科1名程度小論文試験(80分)、面接試験を実施したうえで、提出書類を含めて総合的に判定。文学部英文学科10名程度小論文試験(80分)、面接試験を実施したうえで、提出書類を含めて総合的に判定。小論文では英文を読み、自分の考えを日本語で述べる。面接にはグループディスカッションを含む。外国語学科英語専攻6名程度小論文試験(80分)、面接試験を実施したうえで、提出書類を含めて総合的に判定。小論文では英文を読み、自分の考えを日本語で述べる。英語による面接を含む。外国語学科フランス語専攻7名程度小論文試験(80分)、グループディスカッションを実施したうえで、提出書類を含めて総合的に判定。小論文は日本語の文章を読み、日本語で答える。経済学部経済学科学びと探究型AO 6名程度学びと探究型AO、活動実績型AOのいずれでも、講義に基づく試験(講義90分、講義後の論述試験30分)、面接を実施したうえで、提出書類を含めて総合的に判定。活動実績型AO  6名程度国際経済学科学びと探究型AO 4名程度活動実績型AO  4名程度法学部法学科12名程度小論文試験(80分)、面接試験を実施したうえで、提出書類を含めて総合的に判定。国際関係法学科10名程度人間科学部児童教育学科3名程度書類で一次選考を行い、二次選考では、当日に与えられた課題についてグループディスカッション(80分)と面接を踏まえて、総合的、多面的に判定。社会福祉学科活動実績型AO 3名程度書類選考、小論文試験(80分)、面接を実施したうえで、総合的、多面的に判定。社会人対象AO 2名程度心理学科15名程度講義に基づく試験及びグループディスカッション(120分)、面接を実施したうえで、提出書類を含めて、総合的に判定。表1 2019年度入試における、各学部の総合型選別入試の概要 

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