カレッジマネジメント214号
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32リクルート カレッジマネジメント214 / Jan. - Feb. 2019関する講義や、各学部で設定されたテーマによる4、 5名程度での「集団討論」及び「レポート作成」が行われる。「集団討論」では、第1回目で課された課題の結果を持ち寄り、問題点の明確化や仮説の構築等を行う。このグループによるディスカッションの結果は、第3回目のセミナーにつながってくる。第3回目のセミナー(9月17日)では「集団討論」の結果を踏まえて、「実験・実習」を実施する。この3回のセミナーでの取り組みが評価され、出願許可(9月26日)が出ると、受講生はこの3回のセミナーで取り組んだことを材料に、「最終レポート」を作成した上で受験(10月20日)することになる。入試の一部ではあるが、この3週の間には、課題発見、仮説構築、検証という、大学での学びに必要なプロセスそのものが組み込まれている。それだけでなく、この3回のセミナーを題材とする「最終レポート」によって、この濃密な体験が一連のプロセスとして認識されるようにメタ認知を促すという、教育的配慮のもとに構造化されている。こうした学びのプロセスをガイドするのが「新ガリレオノート」である。「新ガリレオノート」には、セミナー全体の流れといった事務的な記載はもちろんだが、セミナー各回での学びや気づき、取り組んだ課題の結果等も記入できるスペースが用意されている。しかし、その白眉は「セミナーで身に付けたい力」がノートに明記されている点であるのは間違いない。この「身に付けたい力」は、「レポート」「集団討論」「実験実習」に取り組む際の自己チェックリストにもなっている。学習目標が受講生と共有され、自ら学ぶ力を育む枠組みが各セミナーとノートによって提供されている。なお、この身につけたい力の各項目は、新ガリレオセミナーでの取り組みを評価する際のルーブリックに対応している。特に「レポート」の評価結果は受講生本人にフィードバックされ、自身の学習状況の把握もできるようになっている。ここまで手厚い新ガリレオ入試は、継続的な教職協働の賜物である。各学科で選ばれたセンター主任教員と職員によって構成された入試広報センターにおいて、2014年の秋ごろ、5名の教職員で新ガリレオ入試のワーキンググループをスタートした。AO入試の本来の精神に立ち返ることが意識され、数カ月の議論を経て新ガリレオ入試はかたちづくられた。スタートしてからも改善を続けてきている。例えば、それは、ルーブリックの評価基準は毎年修正され、誰が評価に携わっても混乱がないよう工夫が凝らされてきたことに表れている。2017年度入試からは、評価者として職員もこの新ガリレオ入試に参画している。複数回にわたる研修会の実施を通じて評価者の評価基準の摺り合わせがなされたこと等により混乱もなかったこと、入試以外の課から参加した職員の中から高い関心を持って取り組む者が現れたことを蔵野部長、佐々木課長から聞くことができた。これらの実績を基に、2018年度入試からはAO入試を新ガリレオ入試へ一本化することになった。教職協働にて生まれた新ガリレオ入試は、教職協働のもとで雄飛している。こうした教職員による尽力によって継続的に充実を目指してきた新ガリレオ入試は、文字通りに育成型入試として機能している。そのことは、「自分が成長できると思った」(受講理由12項目中1位)から受けに来たという生徒達が、受講前後の自分自身の変化について「とても+やや感じる」(93%)とセミナー受講者アンケートに回答していることが実証してくれている。新ガリレオ入試等をはじめとする諸改革のインパクトは、様々な側面に顕れている。例えば、PROGの結果では、新ガリレオ入試による学生のコンピテンシーは高く、数値でもその能力の高さが証明されている。また、旧来的な学力を問わない新ガリレオ入試(ただし18年度から基礎学力試験が追加されている)ではあるが、入学後に学びについていけず、留年や中退に至った者は一人も出ていない。しかし、北海道科学大学にとって真に重要なのはおそらくそこではない。北海道科学大学が得た成果を、ただ優秀な学生を迎えることができたことのみとして捉えるようであれば、見誤ることだろう。真に重要なのは、こうした新ガリレオ入試により入学した学生がクラスを引っ張っており、北海道科学大学の学びのコミュニティに新たな刺激をもたらしていることだ。コミュニケーションの力が高く、クラスの雰囲気づくりに一役買っており、各学部の教員からもその力が評価されてきていること、初年次教育におけるグループワキャンパスに顕れ始めた改革の成果

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