カレッジマネジメント214号
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33リクルート カレッジマネジメント214 / Jan. - Feb. 2019ーク等を通じて学力ベースの入試を経てきた学生が刺激を受けている様子が授業評価の自由記述に垣間見えることを菊池副センター長は教えてくれた。戸田センター長からも、困っているクラスメイトに助けの手を差し伸べている印象があるとのエピソードを聞くことができた。ところで、この間の大学改革で実現してきた目的養成系の学部の設置や、新ガリレオ入試による学生がもたらした成果は、キャンパス内でどのように顕れるだろうか。ここで、筆者が目の当たりにしたことをそのまま紹介することを許していただきたい。講義棟A棟の1階には塔時計が置かれているが、その斜向かいにある学生食堂(HUS TERRACE)に目を向ければ、多くの自習をする学生の姿が見える。塔時計を右手にし、まっすぐ進んで中二階に至れば、そこにもテーブルに授業の課題や参考書を広げ、問題と格闘している学生の様子を見て取ることができる。北海道科学大学に学ぶべきなのは、入学者選抜は望ましいキャンパスの実現のためにあるという、基本的だが忘れ去られがちなことに立ち返る重要性なのかもしれない。北海道科学大学は先を見据え、さらなる飛躍につなげるべく、新しい一手を打ち出している。2021年度以降に実施される入試の基本方針並びに入試区分の変更等をはじめとする諸改革を、2018年11月に公表した。基本方針では、一般選抜出願者はインターネット出願時に第一志望学科の志望動機を100文字程度書くことをおわりに―改革の先に見据えられているもの求めるといった内容等が盛り込まれている。これは、入学後の面談等の学生支援に生かすこと等が予定されている。この改革にも、学生の学びにつなげる視点が生きている。また、系列校である北海道科学大学高等学校との取り組みではあるが、高大接続の充実を図ることが目されている(図3)。北海道科学大学高等学校の1年生全員を対象に、将来の職業観を醸成するガイダンスや模擬講義等を実施。2年生の前半までは全員を対象に探究活動の枠内で資質・能力を育む学習機会を提供しつつ、後半から3年生にかけては北海道科学大学への進学希望者に絞って、グループディスカッションや実験実習、スクーリングといった、より大学での学びに近づくチャンスを用意することを予定している。こうした学びの成果はポートフォリオとして蓄積され、系列校推薦入試にも活用されることとなっている。予定されているこれらの改革で始まる取り組みとその不断の改善を通じて得られた知見は、新ガリレオ入試の時と同じように学内に浸透し、キャンパスにおける学びの文化を強めていくと筆者には思われた。ところで、ガリレオ・ガリレイが振り子の等時性を発見し、それに基づいて後年にホイヘンスが振り子時計を発明したと伝えられている。北海道で「科学的市民」の育成を長らく続けてきた北海道科学大学は、今年度から北東北での入試広報にも力を入れることとなった。きっとそう遠くない未来に、塔時計を望むテーブルには全道と東北から集った若きガリレオ達が学ぶ姿が見えることだろう。(立石 慎治 国立教育政策研究所高等教育研究部 主任研究官)特集 入学者選抜 改革の現状図3 高大接続強化プロジェクト~高校1年生から大学教員の講義を受講~北海道科学大学高等学校高校1年生高校2年生高校3年生全員対象ガイダンス職業観を養うガイダンスと大学を知る模擬講義一般的なテーマ設定で主体的な学びの楽しさ・面白さを知る大学の学び(専門)につながるテーマこれまでの探究活動を基に、学部学科の学びを再認識して入試へ挑戦高校3年間の学習や様々な活動の記録ポートフォリオを系列校推薦入試に活用●北海道科学大学の ブランドビジョン●北海道科学大学の 沿革・歴史●学部・学科での学びの 特色●専門性を生かした 進路・職業●資質・能力中心 (コンピテンシーベース) の学びを体験●集団討論・実験学習で より深い学びへ●高校生の学びを大学教員、 高校教諭で支援。 同大学在学生による サポート●学部学科の説明(カリキュラム・就職)探究活動(基礎)探究活動(発展)スクーリング(前期)系列校推薦入試前期:全員対象北海道科学大学への進学希望者後期:北海道科学大学への進学希望者1年生から3年生までの取り組みをポートフォリオに蓄積

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