カレッジマネジメント214号
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35リクルート カレッジマネジメント214 / Jan. - Feb. 2019取れないまま、双方とも疑心暗鬼の状況が続いているように思える。あくまで個人的な意見だが、大きく入学者選抜改革は、3つのフェーズ(段階)を経て進んでいくと考えている。まず、第1フェーズは、高大接続答申以降、その理念に共感し、いち早く改革を進めた大学が出てきた「黎明期」である。この時期の改革は、AO・推薦入試の改革である。大学が育成する人材像や教育方針を明確にし、その教育の特徴や人材像を入試の名称に「メッセージ」を乗せて多面的・総合的に評価するものである。こうした入試は非常に手間がかかるため、募集人数も少なく、概ね定員の3%〜20%程度となっている。そこで重要なのは、「マッチング」である。大学のメッセージと受験生の学力・意欲等のマッチング型入試を行い、小さなチャレンジからその成果の検証を行いながら、次のフェーズへの準備を進めている状況と言えよう。第2フェーズは、2021年度入試に向けた一般選抜を含む改革である。全ての入試区分で、APに基づき、学力の3要素を評価していこうという大学がでてきた「導入期」である。本来は、今年がその公表の時期に当っている。2021年度入試に向けた入試改革を発表している代表例は早稲田大学だろう。話題となったのは、政治経済学部では大学入学共通テストで数学が必須になるということだ。その意図としては、政治経済学部では入学後の学びに数学は必要であり、合格をゴールにするのではなく、「カレッジ・レディネス」として、入学後の学びに向けた準備をしてきて欲しいというメッセージである。長文読解を課すことで問われる論理的思考力を含め、真の意味での高大接続型に舵を切ったと言える。そして、第3フェーズは、新学習指導要領で学んだ生徒が大学受験に臨む2025年度入試。ここからが「本格実装期」となろう。この時には、黎明期、導入期で入学した学生の学修成果が検証されるようになり、各大学のAPがより精査されなければならない。その上で、大学入学共通テストでは全ての教科で記述式が導入され、英語4技能や主体性を評価する取り組みの検証も進んでいるだろう。各大学の入学者選抜改革が「カレッジ・レディネス」を意図したものになっているかどうか、そして入学後の育成まで考えられているか、人材育成のメッセージが込められているか。各大学の教育の在り方を考える上で、重要な視点だと考えている。3つのフェーズで進む入学者選抜改革特集 入学者選抜 改革の現状高大接続改革 今後のスケジュール2017年中3新共通テスト⇒新学習指導要領⇒小5高1小6高2中1高3中2中3高1高2高32018年2019年2020年2021年2022年2023年2024年2025年2029年度学習指導要領大学入学 共通テスト 個別大学の入学者選抜改革高校生のための学びの基礎診断実施大綱の策定・公表告示高校における教育のPDCAの構築国語・数学で記述式導入、英語4技能全教科記述式英語4技能は必須?CBTの活用?実施大綱の策定・公表各大学の入学者選抜方法等の予告・公表試行実施期間 (学習改善に活用→選考に使用しない)選考への活用は今後検討現行学習指導要領の下で テスト実施新学習指導要領で テスト実施英語4技能?調査書の電子化?ポートフォリオ活用?探究型学習先行導入新カリキュラム導入「実施方針」の策定・公表「実施方針」の策定・公表プレテストプレテスト大学入学者選抜 実施要項見直しに係る予告通知各大学で選抜実施「平成33年度大学入学者選抜実施要項」発出(32年5月)改訂現高校1年生現小学6年生新学習指導要領一期生大学卒業⇩社会へ黎明期導入期本格実装期入学者選抜改革

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