カレッジマネジメント214号
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37リクルート カレッジマネジメント214 / Jan. - Feb. 2019学科再編を実行しました。まず2016年に芸術学部を3学科から5学科へ改組しました。2017年4月には、九州造形短期大学を九州産業大学造形短期大学部に名称変更し、芸術学部と同じ敷地内に移転。大学美術館に隣接する学生数1500人の九州最大のアート村が誕生しました。2017年は理工系2学部8学科を、理工学部、生命科学部、建築都市工学部の3学部7学科へ改組しました。この改組では、前述の地方中堅私大の存続条件「地域社会への貢献」として、技術面で地域貢献を目指しています。例えば、「ヒューマン・ロボティクス研究センター」では、リハビリ・介護支援ロボットを実用化に向け開発しているほか、「医療診断技術開発センター」でも、世界初のカラー電子顕微鏡の開発を進めており2020年実用化を目指して、最終調整の段階まで来ています。今年10月に開設した「食品開発ラボ」「食品加工プラント」では、「九産大ブランド」の商品を開発し、地域創生に貢献したいと考えています。2018年の文系の改革では、人間科学部、地域共創学部、新商学部を新設し、5学部9学科としました。人間科学部は、臨床心理学科、子ども教育学科、スポーツ健康科学科の構成で、「こども」「こころ」「からだ」で人を育てる本学の新たな領域です。地域共創学部は地方公務員等、観光学科と地域づくり学科で地域社会に貢献する人材を育てます。これまでの商学部と経営学部を整理・統合した新商学部は、経営管理やマーケティングに特化した起業人を育成します。また2018年度入試から、学外の「WEEKDAY CAMPUS VISIT(WCV)」を活用した「育成型入試」を導入しました。リアルな日常の大学の授業を高校生に受講してもらい、面談を経て、高校教員にもフィードバックすることで、学部選択のミスマッチの防止につなげる取り組みです。複数の学部を何度も受講でき、最終的に他大学へ行ってもいい。高校生がミスマッチなく進学できることこそハッピーだという考え方です。WCVを始めて4年目ですが、今年度の希望者は2000人に到達する勢いで、国内最大の参加者数と評価を頂いています。改革の成果を共有し、学外へ発信改革の成果は、まず志願者数の増加です。2017年には12年ぶりに1万人を突破し、2018年も1万1000人を超えました。理工系学部の志願者数も1.5倍に増えました(2016-2017)。就職決定率は、2011年(80%)から6年連続上昇中で、2017年には97.9%になっています。改革を通じて、①危機感の共有、②数値で見る習慣、③PDCAを回すという3点の効果も実感しています。学内の雰囲気も変わりました。2003年に私が赴任した頃には、よく教職員から「昔はすごかったのに」という声を聞きました。しかし、最近はそうした声を耳にすることもなくなりました。発言に見え隠れする「うちはどうせだめ」というネガテイブ思考がなくなり、自信を持って学外に発信できるまでになったのだと思います。理工系・芸術系・文系の融合プログラムを推進来たるAI時代に向けて、どんな学問を勉強すればいいのか、大学の役割もパラダイムシフトしようとしています。集合教育からPBLへ学び方は変化しつつありますが、大学教育の質保証がますます問われる時代になります。本学では、「教育成果評価委員会」を設置し、学修成果の検証に取り組んでいます。先行して昨年はじめた芸術学部の評価では経済界や他大学の方をお呼びして、本学の教育が社会に出たときに妥当かどうかを厳しく見て頂きました。社会の厳しいものさしで評価軸を作り、測定方法を含め、改訂を進めていきながら他学部にも段階的に導入します。一方、「KSUプロジェクト型教育」は、全学で約130ものプロジェクトが進行中です。現在は一部の事業が課外活動の位置づけですが、これを正課教育にするのが次の5年間の課題です。そして、理工系と芸術系と文系の融合プログラムをさらに推進したいと考えています。ロボット開発を例にとると、理工系のものづくり、芸術のプロダクトデザイン、文系、特に商学部のマーケティングの学生がプロジェクトで集まって議論することで、高齢者に優しいデザイン、市場と価格、それに見合ったスペックの精査といった発想を持つエンジニア、デザイナー、マーケッターが自然と育っていく仕組みができます。実践力があるというのは、こういうことだと解釈しています。今後もリカレント教育を含め、地域の教育ニーズに応えていくことが、地域密着型大学としての本学の役割です。

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