カレッジマネジメント214号
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43リクルート カレッジマネジメント214 / Jan. - Feb. 2019に問題がある。学生との接点をしっかり高めて、問題を改善していけば離学率は下がるはず」と言う。その取り組みには、例えば教職共同で取り組む出席のシステムがある。欠席の続く学生には学務課の職員が連絡する。それでも来なければ手紙も書く。教員だけでなく職員も学生との接点を高めようとしているのだ。学生本人に話を聞いて状況を確認し、場合によっては教員に連絡して「面談して下さい」「こういうことで悩んでいるようです」等とフォローしていく。もう1つは、授業の質が離学率に大きく影響するという観点から、学生のアンケートを活用した授業改善だ。現在、アンケートの回収率は97%に達している。非常勤に至るまでの授業担当者一人ひとりにフィードバックされ、評価が悪い場合は授業を改革するよう促される。「物事の結果が悪かったら、やり方を変えなければいけない。でもその前に、考え方も変える必要があると思います。考えることで行動し、結果が出るのですから。『アンケートの取り方が悪い』『学生がいけない』という考え方ではなく、『どうすれば学生に分かってもらえるか』というふうに変えてもらわなければ。そのために、大学としてもFD等の環境を作っています。目で見える数字として、離学率は随分下がりました。非常にうれしいですね」。3つ目は、「出口」であり、学ぶと働くをつなぐ「進路決定率」の向上だ。「建学の精神をベースに、『伸ばす大学』と掲げていますが、学生を伸ばしたことを何で理解してもらえるかとい「学術の世界に全くいなかったので、論文を書いて勝負をしようというつもりはなく、私が役立つことがあるなら何でもやろうと、役職を言われれば全部引き受けました」。そうして学部長や理事としての経験を積んだうえで、2016年の学長選で候補の1人に選ばれた。所信表明では、大学を組織として強くすること、基本的な大学のポジショニング、大学の生き残り策を提案したという。「大学では学長が教授の代表であり、学術研究のトップであるという認識が過去にはあったでしょう。でも現在もそうだったら、恐らく私が学長になってはいません」。自身が学長になったことを、変化が必要だという「組織の意思」と受け止めているという。「企業から来て、大学と企業は違うと確かに感じましたけれども、いったん自分のからだを通そう、とにかく一度はやってみようと、批判は一切しませんでした」。その結果、見えなかったことが見えてきて、いま学長としての言動に役立っているという。「例えば命令すると何が起きるか。『はい』と言うけれど、硬直するのが大学です。それに、企業では命令に従わなければすぐ結果が見えて異動にもなりますが、大学では研究にせよ学生指導にせよ、手を抜いても分かりません」。大学についてもう1つ分かったのが、教員がみんな賢く、教育についてもこんな学生を育てたいという意向があるということ。「けれども個で動くから、それを実現できないのです。組織としてどう力を統合するかというのが、私の仕事なのですね」。うと、1つは就職です。それで、進路決定率で関西ナンバーワンを目指すと言い切りました」。具体的な取り組みの1つが資格取得の奨励・支援だ。「就職活動のとき、その資格自体も大事ですが、資格を取るための努力が評価されます。資格学習支援センターが中心になって、学部を問わず取り組んでいます。2015年、延べ960名しか資格にチャレンジしていなかったのが、2017年は2300名です。難関資格取得者の表彰制度による表彰者数も、この2年間で大きく伸びています。こうした結果が、就職率、進路決定率にもつながっています」。企業経営者から大学人に転じた大石学長は、改革の流れについてこう語る。「大学は企業と違って、決定するまでのプロセスが大切です。権限は学長にありますけれども、これは責任を取るための権限で、決めたものを必ずやりなさいと強制する権限ではない。実際のプロセスは、多くの組織から選ばれた代表が機関として決める。決めたものをしっかりと皆さんにおろしていく。意見を聞いて、皆さんが納得できないことは立ち止まって、再考する」。大石学長は2010年度に医療福祉工学部健康スポーツ科学科の教授となり、学長になるまでの6年間、前職の経験を生かして、健康の概論、ヘルスケア機器の開発、経営管理等で教壇に立った。ゼミ生を抱えて、卒業研究・修士論文等の指導も行った。民間企業出身学長として組織を強化
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