カレッジマネジメント214号
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44リクルート カレッジマネジメント214 / Jan. - Feb. 2019そんな「統合の旗」として、大石学長は就任からほどなくして、中長期経営計画の作成に着手した。建学の精神を改めて認識しようと、教職員50人規模のプロジェクトで作り上げ、2016年1月に制定された学園の指針「ミッション・バリュー・ビジョン」を基に中長期計画作成を手がけた運営会議は、学部長、研究科長、学務部・入試部・就職部等の部長という、教職協働のチームだ。「中期のゴールはまず5年後、80周年の2021年に設定しています。長期計画は、15年後にこうなりたいという姿としてあり、その中に、最初に注力する第1次5カ年計画を中期計画として含んでいます」。計画の実施にあたっては、教学で8項目、組織運営で3項目を設定し、それを達成するための活動計画を各部、各学科が作っている。「各事業の計画にそれぞれ複数の明確な数値目標、ミッション・バリュー・ビジョンを制定し中長期計画へKPIが入っています。離学率一つとっても各学科バラバラですから、一律に何%にしなさいということはできません。学科ごとに作ったもの全部が集まると全体のKPIが達成できるように調整しています」。計画の検証は、結果報告を半期ごとに行う。そこには学長評価、教員評価もある。教員評価は、研究業績、授業、運営、社会貢献の4領域、計114項目ほどで構成される。「私は給与に反映するところまでしたかったのですが、大学はプロセスが大事ですから、まずは昇格の要件として使っています。給料や賞与は次の段階。個人ではなく、学科の成果で賞与を変える予定です」。今後の展望としては、今秋着工の寝屋川キャンパスリニューアル計画がある。新棟の第一期が20年春、第二期は22年に竣工の予定だ。教育環境を「ガラッと変える」ためのキャンパスリキャンパスリニューアルでオープンな学びを実現ニューアルだという。「われわれのような工学系の大学ではたいてい、ゼミ生を抱える形で教育・研究をしていますが、体制がクローズになりがちです。隣の研究室で何をしているか、例えば同じ学科の教員同士でも学生同士でも、よく分からない。そういう形で学生に卒業研究をさせて、世の中に送り出して通用するかというと、疑問が残ります。ITと並んで、コミュニケーションの重要性が言われる時代ですから。それで、教育・研究をオープンなスタンスに変えていかないと、これからの世の中で通用する人間は育っていかないと考え、環境から変えていこうとキャンパスリニューアルを計画しました」。「オープンな学びのスペース」がコンセプトの新棟は、教員の部屋はガラス張りで、研究室の仕切りはない。中央のパサージュ(アーケード街)に全員が集い、行き交いして、隣の研究室がどんなことをしているか、全部分かるように変わるという。これは個々の教員にとっても大学としても、大改革といえる。クローズなスタンスに慣れている教員達は「ガラス張りで、何をしているか全部見える」オープンな環境を嫌がるかもしれないと大石学長は言う。しかしそれも、物事を変えるには「やり方を変える」だけでなく「考え方を変える」のが一番大事という観点で、必要な変化なのだ。教員の意識が変わることで、教育が変わり、学生も伸び、「伸ばす大学」が生き残っていくことができるからだ。(角方正幸 リアセックキャリア総合研究所 所長)第1次5カ年計画(2017-2021年度)重点方針魅力ある大学への改革新入生の受け入れ離学者数の低減進路決定率関西No.1復活教育入学者選抜制の改革学科の競争力強化高大接続強化社会ニーズの変化に対応した柔軟な学部学科改組検討大学院教育の充実及び大学院への進学率の向上資格取得の勧奨全学共通基礎教育を担う組織体制の構築課外活動の活性化運営基盤経営資源の配置内部質保証システムの構築補助金の獲得強化

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