カレッジマネジメント214号
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9リクルート カレッジマネジメント214 / Jan. - Feb. 2019資料として活用するといった方式はどうだろうか。志願者本人が記載するため、自分の意思で内容を作成することができる(自己アピールの場の担保)ことに加え、志願者本人以外(所属高校)の捉え方や他の情報を参考にしたい時に調査書の情報は有効である。これにより、調査書評価の位置づけは間接的な評価となり、上述した高校教員の負担増大の問題や、不合格に対する受験者の納得性の問題について、一定の配慮ができるものと思われる。ただし、他の選考資料との組み合せによる効果的な評価には、調査書の電子化は不可欠である。調査書の電子化が早急に実現されることを期待したい。書類審査によって主体性等を評価するにしても、志願者数の規模が大きい募集区分では、受験者全員を対象にした評価は現実的ではない。ここでは、一般入試における主体性等評価の実現に向けて考えられる制度的工夫として、2つの評価方式を提示する。■合格ボーダー層を対象にした評価教科型の学力検査において一定の競争倍率がある場合、合否のボーダーライン付近の数点差に受験者が集まることが多い。競争倍率が高いほど、合格ボーダーライン付近の得点分布は密になる。一般的な学力検査では、得点順に1点刻み(小数点刻みの場合もある)で合否判定を行うが、この数点差に能力の明確な順序性があるわけではない。そうであれば、ボーダーライン付近の受験者層に対して学力検査以外の要素を評価するという方式が考えられる。受験者にとっては、高校時代に力を入れた活動や実績を活かせるチャンスになり、大学にとっては、よりAPに沿った人材の獲得となりうる。ボーダーライン付近の受験者の抽出については、書類審査を課すことで合否が入れ替わる可能性のある受験者を対象とする。例えば、学力検査[900点満点]、書類審査[100点満点]という配点の場合、まず学力検査の900点満点で判定処理を行い、合格ラインを暫定的に決める。次に、この得点分布において、書類審査の採点結果を加点す一般入試における主体性等評価の制度的検討ることによって、合否が入れ替わる可能性がある受験者のみを抽出する(図1)。したがって、学力検査の得点に、書類審査の採点結果を加点しても最終的な合否に影響しない受験者層は、書類審査の対象から外すことになる。もちろん、書類審査の配点や当該入試の競争倍率などによって、評価対象となる受験者数は変化するが、これらの手続きにより、規模の大きい募集区分であっても、対象となる受験者数を絞ることが可能となり、適切な規模で書類審査が実施できる。ところで、合格ボーダー層の受験者を抽出して実施する書類審査は、結果的に主体性等の評価を全員に実施することにはならない。しかし、高校時代の活動や実績等が書類審査として評価される可能性があるのならば、多くの受験者は、合格可能性を少しでも高めようと、様々な活動や学習に対して意識的に取り組むよう動機づけられるはずである。高大接続改革の本質が、「学力の3要素の多面的・総合的評価」そのものではなく、大学入試における評価の在り方を梃子とした高等学校教育の在り方の転換であるとするならば、上記で示した評価の在り方は改革の主旨にも合致したものである。■出願要件+トップ&ボトム評価合格ボーダー層評価は、一般入試における現実的な方図1 合格ボーダー層評価のイメージ書類審査により合否入替りの可能性があるボーダー層書類審査が0点でも合格となる受験者層書類審査が満点でも不合格となる受験者層高得点低得点特集 入学者選抜 改革の現状
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