カレッジマネジメント215号
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10リクルート カレッジマネジメント215 / Mar. - Apr. 2019いう意図があるのではと思います。杉村 少し違う文脈になりますが、現在、OECDが世界の高等教育のラーニングアウトカムの指標を作ろうとする動きがあります。以前あったAHELOとも異なり、今度はクリエイティビティとクリティカルシンキングに特化したものの世界基準を作ろうという動きです。そこでも中国がオブザーバー国として発言をしています。まさにルール作りを誰がするかというところは、各国の事情や思惑がある。高等教育の質保証枠組みであるNQFの話では、マレーシアはいち早く策定しました。マレーシアが今日、留学モビリティ拠点の1つになり得たのは、そうやって押さえるべきポイントを押さえてきたからだと思います。自分達のスコープを決めて、戦略を決めて実践しています。小林 人が国境を越えて流動をする時代になってくると、そういった学位や資格枠組みといったものが国家ごとにあるのを、統一フレームの中で移動しやすいように置き換えられるようにするのが1点と、あとは世界的な傾向としてのアウトカムですが、何をもってアウトカムにするかについて、アジアの各国はどう見ているのでしょうか。芦沢 広域でアウトカムを定義しようとする動きは、欧州以外の地域にも広がってくる可能性があります。その裏には「チューニングプロジェクト」があります。欧州で生まれた概念で、学位プログラムの設計・実践の方法を共同体で共有し、大学教育の等価性を高めると同時に社会に対してその価値をアウトカムベースで説明しようとする取り組みです。様々な国や制度に影響を与えている概念です。また、このような考え方は、教育の質保証に大きく影響しています。例えば、教育の到達点に対して物事を階層的に分析、ルーブリック等を使った教育が発達してきています。到達点をある程度決めて授業を作り、授業ごとの到達目標を示していく。成績も評価もルーブリックを使って出していく。杉村 別の話として、オンライン教育の展開がどうなっていくかという点は、世界的にもアジアにとっても、今後大きなポイントになってくると思います。例えば、ある分析によれば、現在英国では、半数以上の高等大学教育在学者が場所や時間の制約を受けないオンライン教育の展開がポイントにオンラインで教育を受けている実情があるそうです。こうなってくるとモビリティという概念自体も見直す必要がありますね。少し前まではトランスナショナル教育とか、クロスボーダーと言っていたけれど、もう今はオンラインも進んでいく。学生だけでなく教員も、そしてプログラムやその提供者(プロバイダー)も動く。芦沢 大学単位での国境を越えた動きに加えて、教育プログラム単位で国境を越えた取り組みも進んでいますね。杉村 オーストラリアが始めたフランチャイズ系プログラムはその典型です。また中国がマレーシアに設置した厦門大学の分校のように、最近では政府が作る分校のようなものもあります。そうしたものは個々の大学や人というよりも国が教育機関を動かす話になっており、トランスナショナル教育の内実を整理し直したほうが良いのではという専門家の意見もあります。芦沢 今までは同じ場に集う価値というか、学生のレジデンシーを要求するかどうかが教育機関でも重視されていましたが、教える側ももはやレジデンシーを要求されなくなってくることがあります。それから例えば教授会を毎月どこかでやる必要はなくて、教授会自体がオンラインでできてしまえば、教育プログラムの所在地自体が不要になるかもしれません。ハーバードの1学科が東京にあってもおかしくない時代になるわけです。あるいはバーチャル、どこにも存在しなくても良いということもあり得る。杉村 そうなった時に、さっきのQualications Frameworkがますます大事な役割を果たすと思いますが、ではどこの標準に合わせるかというのは大変重要な問題です。芦沢 モビリティについて言えば、日本は非常に遅れている。オンライン教育に対する評価が非常に低いというのもありますが、1年生から2年生になる時にどこか別の大学に移りたいといったトランスファーの希望をほとんど無視していることが大きい。国内でのモビリティもないのに、国際的なモビリティを発想できるかは疑問です。世界に目を向けると、ここ10年ほど、中国の学生が3年次にアメリカのカリフォルニア州立大学に転入できるような大学間協定Articulation Agreementがどんどんできています。学生のメリットは、例えばカリフォルニア州立大
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