カレッジマネジメント215号
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12リクルート カレッジマネジメント215 / Mar. - Apr. 2019小林 最後に、日本の大学はどういう活路があるのか、お聞かせいただけますか。芦沢 アクセシビリティを高めることです。結局は日本の中にある高等教育に海外からアクセスする層が固定化してしまっているのが実態なので、広い意味ではアクセシビリティを高めるために、外国から人が来る時に、もっと資格やパーシャルな学歴を含めて広く認めていく必要があります。パーシャルとは、直訳すれば「部分的な学歴」ということですが、例えば4年制の大学を出ていなくても、2年まで行った内容をちゃんと成績表を見て適切に評価したうえで編入させたり、「あなたは今だとこれだけ足りないので、残りはこれだけやればいいですよ」とアドバイスしてあげるような動きです。日本の現行制度では、大学中退した人はもう一回大学受験し直して、1から学び直すやり方をするわけですが、そういうやり方では国際競争に負けます。そこからどうやって発想を変えていけるか。また、日本の大学に入ろうとする外国人はわざわざ外国人入試を受けに日本に来なければいけないのが大半で、書類だけで選考できる学科は極めて少ない。入試の時期も固定的で、アクセシビリティの観点があまりに弱いので、そうした辺りを根本的に考え直すことが、優れた人材の獲得と育成につながるという認識をまず持たなければいけない。この閉鎖性を打破するために頑張らないといけないですね。黒田 日本の大学が各々教育理念を掲げて、それに則った人材育成ができるというのは、国際的に見ても大きな強みだと思います。世界の潮流に目を向けつつも日本の教育の良さや強み、恵まれているところを上手にこれからも持続優れた人材の獲得と育成のためには多様な学生のアクセシビリティを高めることが重要させて発展させていくことが一番大事かなと思います。また、日本に来てくれる外国人学生は、貴重なグローバル人材なんです。そういう人達に高等教育の門戸を広く開放すること、また外国人学生と日本人の学生が共に学べるような、学び合えるような学生の多様性を資源として、教育の中に活かせるようにしていくことが、恐らく海外に出るのが経済的な面で難しい学生にも、国際的な資質を身につける機会を提供することになるのではと思います。日本は欧米等と違って人種間の「目に見える」格差が顕著ではないので、経済格差が見えにくいと思いますが、各種統計で現れているように格差は確実に広がっていると感じます。オンラインでの国際教育の普及は経済的に不利な学生達のアクセスビリティを高める1つの有効な手段でしょうし、また今日本の大学に在籍している留学生をはじめ、多様な背景の学生との交流環境を作っていくことで、留学しない、あるいは経済的に留学が難しい、移動しない層に対する「内なる国際化」を推進していくことになっていくと思います。杉村 今のお話はまさにInternationalization at homeと英語では言われている、国内における国際化ですね。日本でも外国人労働者の採用等々受け入れが始まるに当たって、恐らく遠くない将来、大学も学生もさらに多様化せざるを得ない。それまでにこれまでの閉鎖的な仕組みをどのように変えられるか、何から取り組んでいくのか、まずそういう調整が国内で必要でしょう。また、そうした文脈とは別ですが、私はもう一つ日本がやるべきこととして、国際的な動きに対する調整役としての関与があると思います。日本のように、どんな思想でもイノベーティブな動きでも包括して保証されている国は決して多くありませんし、日本ならではの独特なバランスを持った感性のようなものが、利害が複雑に絡み合う国際社会の場で活かされるのではと思っています。芦沢 確かに、そういう面は期待されていますよね。杉村 また、ニッチな大学としての個性を打ち出すことで、特定の国に行くと「日本と言えば○○大学」と名前が挙がる大学があります。特定の分野や切り口で徹底した個性を磨いていくのが、国際的な評価につながる。世界の潮流を追いかけることだけではなく、地域に根差しながらそれが国際社会の課題解決にもつながる、そうした面も大事にしていけると良いのではないでしょうか。

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