カレッジマネジメント215号
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15リクルート カレッジマネジメント215 / Mar. - Apr. 2019指定しそれら諸外国の大学との先導的教育交流を促進するものとなっている。これまで、ASEAN諸国、ロシア、インド、中南米、トルコ、米国、EU諸国と、各5年間、質保証を伴った連携を戦略的に進め、政府の地球儀俯瞰外交を人的交流の面から支えるとともに、採択延べ143大学等において約2.3万人もの交流が実現(H23-29実績)している。SGUの意図は、世界に開かれた大学となるための「体質改善」である。G30等過去の事業は相応の成果を上げたものの、一方で国際化の取り組みが出島的に関連部局に限定していたという反省に立ち、大学内の各種制度や組織文化等全体の国際互換性を高め、国際的な競争力も含めた通用性を確保するというものである。昨年2月に公表されたその中間評価結果を見ると、概ね進捗している。37 大学全体で、外国語による授業科目数は事業開始前と比べ約1.7倍の3万2846科目、外国語のみで卒業できるコースも221増の873 コース、多くの大学においてクォーター制導入等の学事暦の柔軟化がなされ、Joint Degreeの導入も本事業採択大学を中心に進捗している(表1)。こうした中、学生の流動性も高まっており、単位取得を伴う海外留学経験者数は約1.5倍の2.4万人、外国人留学生数は約1.4倍の7万人に増加している。また、トップ型13校に限定してみると、Times Higher Educationの世界大学ランキングの国際スコアが事業開始前に比べ軒並み大きく上昇している。大学ランキングについては単純に真に受けることは控えるべきだが、国際標準を考える際の一参考要素としてこの指標が一律に伸びていることは、採択校の努力が反映されているものとして評価できる。SGUの中間評価から見えること──成果と課題日本の高等教育のVisibilityが高まっていることもその大きな成果と言える。SGU採択大学全体の学生総数及び教職員数は、我が国の大学全体の概ね20%と社会に変革を起こすクリティカル・マスに達しており、相応のインパクトを持って他大学の参考となっている。加えてここ数年、多くの海外の大学関係者から、SGUを契機として日本の大学が世界の大学コミュニティーに積極的に参加するようになる等、Visibilityが高まっているとの声を聞くようになった。一方で課題として明らかなのが、学生の語学レベル向上である。大学がそれぞれ設定する語学基準を満たす学生数は、一定程度の進捗は見られるものの多くが未だ目標に到達できていない。学生の学習モチベーションを高める有効な学習方法や環境の確立等、大学には一層本腰を入れて進めることを期待したい。むしろ気になるのは、どこまで真の体質改善が進んでいるかだ。一部の大学では、学長の裁量経費や寄附金等を活用した国際化施策の財政基盤強化と持続性確保や、事業統括部署とIR部門の協働によるガバナンス強化等、国際化対応が組織全体で実質化し始めている例も見受けられる。しかし細部まで見てみると、未だ多くの大学が国際にプライオリティを置きつつも局所的対応に止まっており、組織全体として体質改善が成し遂げられている大学は限定的と言えよう。本事業の後半5カ年に向けた課題は、それぞれが立てた目標の達成はもちろんのこと、国際通用性ある人事制度をはじめとして大学組織全体に国際Mindを行きわたらせ、職員の高度化を図り、組織の中核的価値として国特集 高等教育の国際展開日本全体MITStanfordHarvardCaltechCambridgeOxford全学生数2,890,88011,14516,13522,7272,23919,20320,631内外国人267,0423,7323,6655,4956677,0498,005%9.233.522.724.229.836.738.8全教員数382,5183,0094,3664,5421,0095,6016,564内外国人21,7721,6962,1151,3834072,7493,126%5.756.448.430.440.349.147.6(出典)文部科学省「学校基本調査(H29)」、JASSO「留学生調査」、QS社「QS World University Ranking 2019」表2 各国大学における外国人比率(学生数及び教員数)

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