カレッジマネジメント215号
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16リクルート カレッジマネジメント215 / Mar. - Apr. 2019際通用性ある業務体制や組織文化を構築することであろう。(参考:表2)しかし、国際化にはコストも手間もかかる。留学生リクルート、日本人学生の派遣先との交渉、学内規程の多言語化、国際共同研究支援等々、やればやるほど手間もコストもかかる。SGUやWPI等補助事業には終わりがあり、限られた財源の中では国際に予算を回したくとも困難である場合が多く、事業終了後に向け、いかに持続可能な形で自律的体制を整えるか、特に国際専門人材とその雇用財源の確保について、頭を悩ます大学が多いはずである。この解決には、受益者負担を原則に必要なコストは国際部門自らが賄う考え方への転換が必要だ。真っ先に考えられるのは、外国人留学生の授業料の値上げと、サマープログラム等の短期受入留学プログラムの有料化だ。国際的に、我が国の、特に国公立の授業料は破格であり、奨学金や授業料減免等手厚い。短期プログラムも、無料どころかわざわざ奨学金を出して呼び込んでいる例も多い。反対論者は値上げ・有料化後の留学生減少を真っ先に気にするだろうが、それは過渡的には起こり得るが、むしろ値上げによる留学生選抜機能の強化、Reputation向上とブランドの確立、増収分から経済的支援が真に必要な留学生への奨学金拡充やスタッフ国際展開をさらに加速するために──Sustainableなモデルの構築を(1)財源の確保と資源の共有の充実等が期待できるほか、短期プログラムは、日本人学生を積極的に関与させることで多様性マネジメントの訓練機会となるばかりか、世界に対する宣伝効果と留学生の長期受入にも繋がる。また、何よりも価格に見合ったサービス提供のため、教育とサービスの質を改めて世界基準で見直す良い機会となる。受益者負担として国際関連費用を留学生から徴収することは、国際的にも極めて自然な考え方であり、高等教育の税負担をしている国民の理解も得られやすい。お金を出して来てもらう、お金がないと来てもらえないといった発想では、早晩行き詰まることは明らかだ。個々の大学を越えたネットワーク活用も、有効策の一つだろう。例えば外国人留学生受入後の各種サービスの提供やリクルート活動については、個々の大学が全てを自前で準備するにはコストも手間もかかりすぎる。例えばタイには50以上の日本の大学の拠点があるが、目的の共通する部分について資源を共有してAll Japanで留学生リクルートセンターを設置し、在外のJASSOやJICA、JETRO等の国の機関と協働することで、効果的、効率的、戦略的な活動が可能となるはずだ。前述の短期プログラム等も、例えば昨今米国トップスクールからニーズの高いインターンシップ付き短期留学プログラムの構築に向け、連携企業の開拓を共同で行うこともあり得る。中教審答申で提言されている「地域連携プラットフォーム」や「大学連携推進法人」等の枠組みを活用する手立てもあろう。「海外展開」は、一見魅力的なアプローチだ。実際、新興国から日本の大学や高専への展開オファーも見受けられる。しかし、その在り方については再考の余地がある。既存の文部科学省の制度上は、外国へのキャンパス設置は可能となっているものの、大学設置基準の厳格な適用や財政負担への懸念等から活用事例は一つもない。また、外国にキャンパスを設置するとなると、国によっては巨額の初期投資を法的に義務づけている例もあり、新興国に見られるようなハードな海外展開には障壁も多い。(2)多様な海外展開策の模索を

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