カレッジマネジメント215号
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23リクルート カレッジマネジメント215 / Mar. - Apr. 2019特集 高等教育の国際展開う。附属中・高等学校は、附属というメリットを活かし、大学教育の要請に見合う高度な英語教育を行っている。全ての高校がそうなることには無理があるが、立命館で展開されているような個別の高校と大学の「教育」の接続は、もっと考えられてよいのかもしれない。ただ、「百聞は一見に如かず」という諺が通用することを、お話を伺いながら思った。たとえ外国語があまりできなくても、短期研修であっても、参加することに意義ありという側面もある。学生のなかには、参加によって大いに刺激を受け、英語力の不足を痛感し、帰国後に学内のTOEIC講座等を受講する者が増えており、そのための講座開設を増やしている。呼び水としての短期研修の意義はあり、これをどのようにして次のステップにつなげるかは、大学としても学生としても考える必要があろう。もう1つ考えるべきこととして、日本国内の国際化である。今後、長期にわたって日本に定住する外国人は増加するだろう。外国人と日本人の共生のためには、日本において相互理解を深めることが必要である。外国人受入の短期研修は、この役割を果たしている。とりわけ冒頭で紹介した半年から1〜2セメスター立命館に在籍するStudy in Kyoto Program(SKP)は人気が高く、2017年度は245名の受け入れとなった。京都という地の利を活かし日本語・日本文化を集中的に学ぶなか、外国人の日本理解が進むだけでなく、日本人学生も外国人を知るようになる。キャンパスの風景はここ数年で大きく変わったという。それは、また、海外を志向する日本人学生の増加にもつながるであろう。ところで、立命館大学の現在の中長期計画R2020は、次期のR2030にバトンを渡す時期に差し掛かっている。仲谷総長は、2030年にむけた学園ビジョンR2030「挑戦をもっと自由に」のもと、政策目標にいかに内実を与え具体的な計画とするか、先頭にたって学内をリードされている。総長は大きく4つの方向を打ち出されているが、国際展開に関しては現在の方向を推進していくことは当然として、もう1つ別次元での展開が必要だと考えておられる。それは「突き抜けたグローバル化」と呼称され、次のように学園ビジョンR2030に掲げる「挑戦をもっと自由に」語る。「日常生活のグローバル化、日常の意識のグローバル化を推進していくことが課題だと考えています。既に隣の席に外国人学生が普通に座っているような環境、当たり前のように海外研修に出かける環境を作り出しつつあります。これは、グローバル化というだけでなく、ダイバーシティの推進ともいえます。共同学位は、そのためのステップなのです」。共同学位の設置は目的ではなく手段ということだが、では目的は何だろう。それは共同学位の特徴をうかがったお話のなかから見えてきた。立命館の共同学位は、他に類例を見ない方式でもって、しかも学士課程で採用しているところに特徴がある。というのは、共同学位の多くは大学院レベル、それも既存のプログラムを基盤とするデュアル・ディグリーが主流だからである。2年間と4年間という期間のみならず、専門教育だけで編成する大学院と、専門教育以外に教養教育等も含めて編成する学士課程とでは、プログラム開設に至る労力が大きく異なる。それにも拘わらず、なぜ、こうしたプログラムを設置するのかという問いに対して、仲谷総長は、「確かに、デュアル・ディグリー、ジョイント・ディグリー、どちらも開設までは本当に苦労が多いです。でも、これからの日本を支える世代は、もっと世界を知り、世界の多くの人とコミュニケーションをとることが、仕事の上だけでなく、日本での日常生活においても求められます。そう考えると、学士課程においてそうした力をつけることが必要なのです。未来のリーダーを育てるために、こうしたプログラムがあるのです」と、未来のリーダー育成という目的を強調する。R2030における「突き抜けたグローバル化」も、その一環だという。日本を担う次世代は、グローバリゼーションやダイバーシティを当然とすることが求められ、そうした者がリーダーとして日本を牽引する。立命館の学生をそうしたリーダーに育成したい、という仲谷総長の抱負はよく分かる。時流に乗った国際化ではなく、次世代への投資としての国際展開である。ここ四半世紀、日本の大学はこぞって国際化に力を入れてきたが、こうした明確な目標を掲げて国際展開している大学はどの程度あるのだろう。仲谷総長の舵取りが期待される。(吉田 文 早稲田大学教授)
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