カレッジマネジメント215号
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2821世紀社会に向けて育成すべき新たな人材像が政府や産業界から盛んに喧伝され、各大学の教育現場は慌ただしく対応を迫られている。最近では、科学技術力の強化と必要性を背景に、科学・技術・工学・数学分野に通じた「STEM(ステム)人材」の育成や、そこにArtを加えた「STEAM(スティーム)人材」の育成も議論されるようになり、少しずつ実践も始まっている。それに比べれば、21世紀におけるグローバリゼーションを前提に設定された「グローバル人材」は、大学が掲げる人材目標としてすっかり定着した感があり、さほどの目新しさはない。しかしだからこそ、「グローバル人材」育成をめぐる課題は実際の成果を問うものに収斂してきている。あり体に言えば、どんな教育内容や学習経験が「グローバル人材」の育成に効くのか、実質的な方法論が問われ始めている。本稿では、そんな「グローバル人材」育成に関する最先端の取り組みを、関西外国語大学(以下、関西外大)の事例で見てみよう。関西外大の特徴は、長い伝統に裏打ちされた外国語教育を基層にしつつコンテンツ重視のリベラルアーツ教育を整備・提供している点にある。そこには「言語+α」のグローバル人材モデルが機能している。レンガ色で統一された校舎の立ち並ぶ瀟洒な中宮キャンパスに谷本義高学長を訪ねた。関西外大の前身となる谷本英学院が産声を上げたのは、太平洋戦争終結からわずか数カ月後、1945年11月のことだ。創設者は谷本義高学長の祖父母に当たる谷本昇氏・多加子氏。昇氏は戦前英語教員だったが、敵性言語である英語を教えることができず、やむなく数学教員として教壇に立ったという。終戦後の混乱の中、昇氏と多加子氏を英語学校の設立に向かわせたのは、悲惨な戦争を二度と繰り返したくないという強い思いと、そのためには外国語を学び多様な文化を理解できる人材の育成が急務だという信念だった。当初わずか8人の学生で始まった谷本英学院は、関西外国語学校(1947年)、関西外国語短期大学(1953年)を経て、1966年に関西外国語大学が開学するに至っている。外国語学部一学部からのスタートだった。こうした沿革が示すように、関西外大は外国語教育を主軸に据えた学校・大学として展開してきたが、かといって外国語だけを重視してきたわけではない。建学の精神に「国際社会に貢献する豊かな教養を備えた人材の育成」と「公正な世界観に基づき、時代と社会の要請に応えていく実学」を謳うように、教養と実学の両面の教育に力を注いできた。近年、関西外大の教育は単なる「外国語大学」という枠に収まらない広がりを持つようになっている。確かに、外国語大学として、話者の多い英語とスペイン語に焦点化しつつ最近では中国語にも力を入れてきた。「しかし本学は、言語を学ぶことでことばという障壁を下げた後どうするのか、次の一手を考えられるようになることを重視しています。そこで必要になるのが教養でありリベラルアーツ。関リクルート カレッジマネジメント215 / Mar. - Apr. 2019“言語+リベラルアーツ”で育成するKansai Gaidai型グローバル人材谷本義高 学長3関西外国語大学関西外大からKansai Gaidai Universityへ

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