カレッジマネジメント215号
30/62

30リクルート カレッジマネジメント215 / Mar. - Apr. 2019留率は高く、進学後は積極的に海外に出て仕事ができる人材に育っていると谷本学長は語る。留学中に就職を決めてきてしまうような「尖った学生」も出てきているというから頼もしい限りだ。次に外国語学部。学生規模7000名を擁する最大規模の老舗学部だ。英米語学科は国際関係、国際文化、言語の3コースで構成され、英語に加えて内容重視アプローチ(Content-based approach)でリベラルアーツもしっかり学ぶことが可能だ。専門科目としてビジネス系の「経営学」「ホスピタリティ」「ホテル・ビジネス」「エアポート・ビジネス」等も提供されている。外国語学部では、2018年に「サービス・ホスピタリティ業界のリーダー育成プログラム」を立ち上げ、管理職として働けるホテルマンの育成も開始した。海外留学中には専門教育とあわせて必修のインターンシップを経験することで、対人能力(サバイバル能力)を身につけ、新しい分野を切り拓いていける人材を育成していくという。3つ目の英語国際学部は、2014年に国際言語学部が改組されて誕生した学部。1年次に英語と中国語を徹底的に学習し、2年次には原則全員が1学期ずつ英語と中国語の語学留学をするのが特徴だ。その後3年次・4年次には経済学・経営学の概論・各論を学ぶ。英語国際学部の目標は、中級レベルの英語と中国語を駆使できる分厚いミドル層のビジネスパーソン育成だ。関西外大はこれからの日本社会に必要とされる人材を切り分け、3つの学部の人材目標や教育に反映しつつ育成しているのである。このように見てくれば、関西外大の学びの主軸に「留学」が位置づいていることは明らかだ。しかもそのための支援や環境整備は極めて手厚い。その結果、関西外大は毎年1800名ほどの学生を海外に送り出す一方、逆に海外から北米やヨーロッパを中心に620名ほどの留学生を受け入れている。それを可能にしているのが海外大学との交換留学協定だ。谷本学長は、これまで長い時間をかけて海外大学との協定締結を進めてきたという。原点となったのは米国アーカンソー大学との交換留学だ。開学間もない1960年代末に始まった。その後も着実に協定数を増やし、2019年2月現在で55カ国384校に上る。今や全国トップレベルの規模だ。ここまで協定校を増やしてきたのは、できる限り多くの学生を一カ所に集中させることなく少人数ずつ協定校に送り出すためであり、同様に、多様な国・地域から少人数ずつ留学生を受け入れることで学内にダイバーシティを確保することを目指してきたからだと学長はいう。もちろん、単に協定校数が多ければいいというものではない。肝心なのは協定関係を形骸化させず、しっかり稼働させることだ。交換留学を活性化させるため、関西外大はしっかりと手を打ってきた。その一つが、日本人学生を送り出すための給付型奨学金の整備だ。どの学部の学生も、言語とリベラルアーツについて一定程度の学習成果を出せば、海外大学での学費・食費・住居費を全て大学が負担する給付型の留学奨学金システム(フルスカラシップ)を整備している。もう一つは、外国人留学生を受け入れるために、グローバルな水準で質保証されたカリキュラムや学習環境を提供することだ。留学生にとって、日本の大学で学んだ科目を帰国後に単位互換できることは交換留学の重要なインセンティブになる。その意味で、2018年に「関西外大流グローバル人材育成プログラム」がスタートしたことは注目に値する。特徴は、「アジア」に照準したAll Englishのリベラルアーツ教育という点だ。北米大学のナンバリングで言えば300番台(中級レベル)に相当する60科目(1科目4単位)ほどが提供され、例えば、Asian Religion and Philosophy、History in Asia、Anthropological Approaches to Cultural Issues、Japanese Lawといった講義科目が開設されている。授業を担当するのは各国出身の教員達だ。40カ国300〜400名の留学生向けに英語による10〜30名の少人数リベラルアーツ教育が行われ、そこには、英語能力や学内成績の点で審査を通過した日本人学生が交じって共に学ぶ。グローバルで多様性ある学習環境や、京都・大阪・奈良という豊かな歴史的教材の宝庫が揃い、世界から留学生を惹きつけることに成功している。今後、同プログラムはリベラルアーツ化を強める関西外大の顔になっていくに違いない。学生の送り出しと受け入れを手厚く支援

元のページ  ../index.html#30

このブックを見る