カレッジマネジメント215号
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44グローバル化や国際化を積極的に進めているマレーシアの高等教育は、その一方で近年深刻化している雇用問題と人材育成、ならびに多文化共生実現の課題のもとで、知識基盤社会に必要な人材確保と、そのためのラーニング・アウトカムを重視した教育改革を推し進めている。現在顕在化している諸問題の概観を図1に示したが、その経緯や背景を順を追って見ていきたい。マレーシアの高等教育は、ここ20年の間に大きく変化した。それを象徴するのは、グローバル化や国際化政策のもとで、かつての留学生送り出し国から受け入れ国へと変容を遂げたことである。マレーシアでは1957年の独立以来、教育が国民統合と国家発展のための人材育成留学生送り出し国から国際交流拠点国への要として重要な役割を果たしてきた。高等教育は、初等・中等教育と比べ、当初は特定のエリート層を対象とした教育であったが、1990年代に入り高まる進学需要を受けて、政府が民営化を促進し、1996年に私立高等教育機関法をはじめとする高等教育改革に関連する6つの法律を施行すると、高等教育機関は私立大学とそこでの英語プログラムの急増により一気に多様化した。特に高等教育の国際化により、クロスボーダー教育やそれによる共同学位プログラム、海外大学の分校開校等が進んだことは、それまでマレー系優先政策によるクォータ制度のもとで大学進学の機会が制限されていた中国系やインド系等、マレー系以外の学生の国外留学の流れを大きく変え、国内での教育機会の拡充を促した。この結果、高等教育の就学率は、ユネスコの統計によれば1980年の4%から1990年には7%、2000年には26%、そして2015年には41%までになった。そればかりか、英語プログラムの登場は海外からの学生の進学先としての魅力に繋がり、近隣のアジア諸国をはじめ、中東やアフリカ諸国からの留学生移動の流れを生んだ。こうしてマレーシアは、今日では留学生受け入れにおいて世界の国際交流拠点の1つとなっている。こうした高等教育の戦略的展開を受け、2004年に教育省とは別に高等教育省が設けられた。高等教育省はその後2013年に教育省に再統合され、2015年にまた分離したあと2018年に再々統合されるという紆余曲折を経るが、この間一貫してその時代の要請に即した人材育成リクルート カレッジマネジメント215 / Mar. - Apr. 2019人材育成と新たな多文化共生問題に挑むマレーシアの高等教育杉村美紀上智大学総合人間科学部 教授/ グローバル化推進担当副学長「マレーシア高等教育計画ブループリント(2015-2025)」グローバル化国際化国内での多文化共生の実現国民国家の発展と人材育成・確保・ 留学生受け入れ・ 教育機関やプロ グラムの国際化・ 外国人労働者受け入れ・ アウトカム重視図1 マレーシアの高等教育における重層的な課題12

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