カレッジマネジメント215号
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48リクルート カレッジマネジメント215 / Mar. - Apr. 2019大学は、最終学歴となるような「学びのゴール」であると同時に、「働くことのスタート」の役割を求められ、変革を迫られている。キャリア教育、PBL・アクティブラーニングといった座学に留まらない授業法、地域社会・産業社会、あるいは高校教育との連携・協働と、近年話題になっている大学改革の多くが、この文脈にあるといえるだろう。この連載では、この「学ぶと働くをつなぐ」大学の位置づけに注目しながら、学長および改革のキーパーソンへのインタビューを展開していく。各大学が活動の方向性を模索する中、様々な取り組み事例を積極的に紹介していきたい。今回は、自校の学生の現状を踏まえた「東邦STEP」が成果を上げ始めている愛知東邦大学で、榊 直樹学長と松井慶太氏(入試広報課 課長補佐)にお話をうかがった。愛知東邦大学が経営学部地域ビジネス学科の単科で開学したのは2001年(当時の名称は東邦学園大学)。1923年に東邦商業学校(現・東邦高等学校)、1965年に東邦学園短期大学商経科を作った経緯を引き継ぎつつ、4年制大学としてのスタートを切った。学園の創設者を曽祖父に持つ榊学長は、人材育成の方針を「学生個々がいかに自信や強みを身につける4年間にできるか」だと語る。「2001年開設の経営学部、2007年開設の人間健康学部(当時の人間学部)、2014年開設の教育学部の3分野において、就職決定に留まらず、社会でも学び続け、活躍する人材を輩出したい」。現在は3学部4学科で定員350名の規模になっている。開学当初こそ当時の定員200人を超す学生を集めたが、榊学長が常務理事として来た2006年頃には、人数の減少に加えて質的な低下も目立っていた。榊学長の目には「学ぶ意欲があるだろうか、というような学生」と映り、「将来への強い希望や意欲を持っている人たちばかりではない」との実感を抱いたという。「18年間、あるいは小学校からの12年間、経済的に難しい状況や、それに伴う家庭環境から、自分が生きていく目標・価値・生きがい等を感じたり考えたりできてこなかった。それを基課題は教育の“育”の部分本に立ち返ってやろう、と。全体としてやはり教育の“育”、育むのほうに力を入れていかなければならない。これは相当エネルギーがいることですし、学生一人ひとりを人間として敬意を持って丁寧に見る姿勢、心根がないとできないと思ってきました」(榊学長)。こうした危機感の中の様々な取り組みの1つが、3年生の2月に1泊2日で行う「就職合宿」だ。希望者のみ・有料だったものを、2009年度の文部科学省「大学生の就業力育成支援事業」採択を機に、全学化・無料化した。主な内容は、企業の人事担当者を招いての模擬面接だ。自分の強みを発見し、それを伝えるトレーニングであると同時に、他の学生を見て自身の現在位置を確認することで「自分の物差し」を持つことを目的としている。榊学長が「1泊2日にしては不思議なくらい、格段に意識は変わる」と評価就職合宿〜東邦STEP愛知東邦大学学ぶ姿勢作りから自己実現までをサポートする「東邦STEP」榊 直樹 学長

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