カレッジマネジメント215号
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54政府は、『まち・ひと・しごと創生総合戦略(2018改訂版)』(2018年12月21日閣議決定)において、「人口減少が地域経済の縮小を呼び、地域経済の縮小が人口減少を加速させる」という負のスパイラルに陥るリスクを指摘したうえで、今後の施策の方向として、①地方にしごとをつくり、安心して働けるようにする、②地方への新しいひとの流れをつくる、③若い世代の結婚・出産・子育ての希望をかなえる、④時代に合った地域をつくり、安心なくらしを守るとともに、地域と地域を連携する、という4つの基本目標を掲げている。中央教育審議会『2040年に向けた高等教育のグランドデザイン(答申)』(2018年11月26日)においても、地方創生が実現すべき社会を、「個人の価値観を尊重する生活環境を提供できる社会」としたうえで、「高等教育の将来像を国が示すだけではなく、それぞれの地域において、高等教育機関が産業界や地方公共団体を巻き込んで、それぞれの将来像となる地域の高等教育のグランドデザインが議論されるべき時代を迎えている」との考えを示し、「地域連携プラットフォーム(仮称)」の構築を提案している。今後、国によりガイドラインが策定される予定であるが、地域が主体性を持って、新たな視点を積極的に取り入れながら、自らの地域資源を最大限に活用し、地域の持続可能性を高めていく必要がある。それは、高等教育の未来を確かなものとするための前提でもある。その一方で、足元を見ると、東京一極集中と地方の衰退は想像を超える速度で進行している。各地の大学を訪問した際に実感するのは、冒頭の「負のスパイラル」に象徴される構造的問題が深刻さを増しつつある現実である。東京都のある特別区の外部評価と北関東のある町の人材育成に関わり、人口増加に伴う行政需要増への対応が目下の最大の課題である自治体と人口減少に歯止めがかからない過疎地域市町村の姿を同時に目の当たりにしてきた。前者の特別区の場合、直近10年間で人口が約10万人増加したのに対し、後者の町は、人口減少と高齢化による税収減のなかで、増加する医療・福祉費や老朽化が進む道路・構造物の維持費等をどう賄うか、行政サービスの水準を如何に維持するか、産業の担い手をどう確保するか等、持続可能性に関わる深刻な課題を抱えている。以下、人口と経済活動の両面から、都道府県別データを見てみたい。2015年国勢調査で都道府県の人口を見ると、東京圏(東京、神奈川、埼玉、千葉)が全国の28.4%を占め、これに愛知、滋賀、福岡、沖縄を加えた8都県が2010年に比べて人口が増加しているのに対し、39道府県で減少している。減少率の大きいのは秋田(5.8%)、福島(5.7%)、青森及び高知(4.7%)等であり、2005〜2010年と2010年〜2015年の増減を比べると、33道府県で減少が拡大し大きな人口減少が見込まれる東北各県大学を強くする「大学経営改革」地域の持続可能性と大学の果たす役割吉武博通 公立大学法人首都大学東京 理事リクルート カレッジマネジメント215 / Mar. - Apr. 201981負のスパイラルに象徴される構造的問題の深刻さ

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