カレッジマネジメント215号
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56リクルート カレッジマネジメント215 / Mar. - Apr. 2019としての農業、科学、工学の大学を米国各州に興し、「地域の産業力を高め社会階層性を打ち破る」地域のための高等教育を作ろうとして始まったLand-grant Collegeの日本版であり、札幌農学校/北海道大学はその創立から地域発展のための高等教育機関であったとしたうえで、「大学の社会貢献は、良い学生を育てることにつきるが、そのために地域の大学は実学的な基盤を持つことが大切で、地域貢献を基盤に研究ができるような組織を大学(群)が公/民の外部組織と連携して作れるかどうかに事柄の成否はかかっている」と述べる。そして、地域に系統立った学問/技術の成果を定着させること、一過型のイベントではなく、十分な継続的活動が必要であることを強調する(丹保憲仁氏は1995年から2001年まで北海道大学総長)。いずれの考え方に拠るにせよ、地域や社会の支持を得ることなしに大学の存続・発展はあり得ない。大学はこれまでも教育を通して様々な分野で地域社会を支える人材を養成してきた。産官学連携を通した研究面での地域貢献、医学部や附属病院による地域医療高度化への貢献等も活発に行われている。地域主導による経済再生と課題解決また、近年では、地域のニーズも踏まえた新学部設置、「地(知)の拠点大学による地方創生推進事業」による支援を受けての教育プログラム改革等、地域を重視した諸改革がこれまでにも増して展開されている。このような成果を踏まえたうえで、地域が大規模かつ急激な構造変化に直面するなか、大学は持続可能な地域の創生に向けて如何なる役割を果たし得るのか、深く問い直し、より総合的・戦略的な地域との連携を目指す必要がある。林・山鹿・林・林(2018)は、地域経済衰退の根本的な原因は地方経済の脆弱性にあるとし、産業構造が衰退・停滞産業に特化していること、財政依存型を特徴とする経済であることを指摘する。そのうえで、企業誘致や公共投資に代表される外来型開発から脱却し、地域主導型の内発的発展への転換が不可欠と述べる。また、玄田(2010)は、停滞気味の地域を再生するために不可欠な条件の第一に、地域を思う人々の対話による「希望の共有」、第二に、地域の個性、地域の自分らしさ、地域の強み等と訳されている「ローカル・アイデンティティ」の再構築、第三に、「地域内外のネットワーク」を挙げている。過去を遡れば、経済活動の多くは地域単位で営まれるとともに、それぞれの地域は独自の特色ある産業を持っていた。その後、大都市への産業集積が進むなか、物やサービスの域外からの調達(移入)が増え、資金や雇用機会の域外への流出が拡大すると同時に、地域を特色づける産業も衰退し、地域経済の足腰が弱まっていったとされている。時間を逆回しするような発想は現実的ではないが、地域にある資源を掘り起こし、磨きをかけて競争力ある産業に育てるとともに、生産性を高め、働き甲斐のある就業「地域の持続可能性と大学の果たす役割」の概念図地域の持続可能性【社会貢献】基礎研究応用研究地域の企業等との共同研究地域の問題解決を目的とした研究【研究】高度専門職業人養成 幅広い職業人養成、総合的教養教育 リカレント教育生涯学習機会の提供【教育】人材の育成知識・情報の蓄積・高度活用場づくり教育を通した地域貢献研究を通した地域貢献直接的地域貢献好循環好循環
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