カレッジマネジメント215号
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6リクルート カレッジマネジメント215 / Mar. - Apr. 2019小林 小誌ではダイナミックな変革を遂げているアジア各国の動向を捉えるために、各国の専門家のリレー形式で「ダイナミック・アジアⅠ」(2009年〜2011年)、「ダイナミック・アジアⅡ」(2017〜2019年)の連載を行ってきました。近年アジアの高等教育で一体何が起こっているのか、監修をしていただいた杉村先生より一言お願いできますか。杉村 前回の連載からこれまでの間に、アジア各国では高等教育政策が進展する一方、高等教育圏が形を成してきたという印象がまずあります。特に、アジア共通の単位互換制度が整う方向が見えてきたのが大きな変化です。併せて単位互換制度の仕組みがアジアだけではなく、EUやアメリカ、中南米といった他地域とも、様々な形で融合できるように、地域間の広い視野が持ち込まれようとしているのが特徴的だと思います。2つ目は民営化がさらに進む一方でクロスボーダーな教育枠組みが増えてきたことと、それから日本が試行錯誤を繰り返しているなかで、アジア各国では、かなり思い切った政策と多様な教育プログラムを打ち出す動きが加速してきた点です。ただその一方で、3つ目として、国際化・グローバル化が進む一方では、昨今の保護主義的な、少々内向きともとれる政策志向も目立つようになってきていると感じられます。国際化をうたいつつも、国内の教育政策をより強固のものにしていこうという動きですね。例えば私が担当するマレーシアは留学生を積極的に受け入れ、多文化・多様化が進む一方で、多文化共生の問題として、アフリカや中東の学生をどうやって教育現場でインクルージョンしていくかということがテーマになっています。国際社会では「持続可能な開発のための目標(SDGs)」が高く掲げられていますが、そこで言われる公正性や平等、グローバルシチズンシップ教育といったキーワードが、まさに喫緊の課題として高等教育の現場でも議論されています。国際化が地域化を進め、さらに今度は地域間をつなぐようなものになりつつある一方で、各国が自分の立場や主義主張をより強く主張している。グローバリゼーションとローカライゼーションのバランスをとるのが、今後の大きなポイントになりそうです。小林 そんななかで、芦沢先生はUMAPの国際事務局を務められていますが、その内容をご説明いただけますか。芦沢 UMAPはUniversity Mobility in Asia and the Pacic※の略で、東洋大学は2016〜2020年の間、国際事務局を担当しております。もともとは、EUにおける学生の流動化促進を目指したエラスムス計画をアジア地域でも展開しようという趣旨で、アジア太平洋地域における高等教育機関の学生・教職員の交流促進を目的に1991年に発足した事業です。こういう枠組みで多彩な大学が参加するコンソーシアムというのは世界的にも珍しいということで、現在名目上は約500大学参加していますが、実際に学生交流に参加している大学は250程度です。日本では115大学程度が名を連ねつつも、実際に学生を交換しているのは20大学程度となっています。現在、国際事務局ではこれを何とか活性化して、本来目指したアジア版エラスムスに近づけようとしています。東洋大学が国際事務局となった経緯ですが、スーパーグローバル大学創成支援事業(以下、SGU)に申請する際に申請に盛り込んだ内容であるためです。現在は、日本でも会員数が増加しつつあり、カナダが昨年正式加入したほか、アメリカもニューヨーク州が加入、アジアでもタイ、マレーシア、フィリピン、台湾、韓国、中国、モンゴル等で大学の参加が活性化しています。先ほどお話に出た単位互換についても、UCTSというUMAP独自の換算基準を設定しています。小林 つまり地域間で単位交換ができるような仕組みが各地域で作られているということですね。芦沢 そうです。最近、東南アジア教育大臣機構(SEAMEO)が行った会議でも、アジア全域で使える新しい単位互換スキームを議論しましたが、Asian Academic Credits (AACs) を各種の学生交流に使っていこうという方向性になりました。実はこのAACsは、事実上UCTSと内容は同じ基準です。シンプルで分かりやすい制度になりました。UMAPでは今年は新しい会員を増やしていくのと並行クロスボーダーな新たな教育枠組みが拡がるアジアの高等教育※UMAPは1991年に発足した学生交流のための機関であり、政府間の協力を基礎とする国際コンソーシアムである。現在、東南アジア諸国のほか、フィリンピン、台湾、日本、韓国、中国などが積極的に学生交流に参加している。

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