カレッジマネジメント215号
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7リクルート カレッジマネジメント215 / Mar. - Apr. 2019特集 高等教育の国際展開して、「UMAP Honors Program」という優秀な学生だけを集めた短期の大学院レベルのプログラム、あるいは各国から優秀な高校生を集めた「UMAP Advanced Basement Program」といったプログラムを新しく始めます。ほかにも、参加校のニーズに合わせて、短期のインターンシップ等もどんどん増やしていこうとしています。小林 学生以外の交流はあるのでしょうか。芦沢 教職員の交流ももちろんやっていますし、研究交流も助成金枠を持っています。メインはエラスムスのように学生が自由に移動して勉強できるように、もっと広げていこうとしております。個別の大学間の学生交換は、バイラテラルな学生交流ですが、UMAPは加盟している大学間で自由に行き来するモデルですので、マルティラテラルなコンソーシアムです。世界には様々なコンソーシアムがあります。概ね特定の大学のみが参加するサロンのような大学ネットワークが多いなか、UMAPは特別で、大学として認定されているところであればどこでも入れる。しかも国としての会費は取っていますが、大学単位での会費は無料。そういう意味では政府間合意に基づいて、国の後押しのもとで動いていることになります。小林 中国はこうした動きに対してどうしているのですか。黒田 前回の連載時に中国をご紹介したのは2011年でしたが、あの当時はまだ2010年にGDPで世界第2位になったばかりで、中国と日本の経済規模の差はそこまでありませんでした。しかし、今ではGDPは日本の約2倍になり、内実共に大国となりました。そして、中国では共産党のトップが代わることで外交や経済の戦略の重点がかなり変わります。近年では2013年に習近平氏が国家主席に就任し、現代版シルクロード経済圏構想「一帯一路」が国家戦略として始まりました。そもそもの主眼は経済開発や経済協力の強化、周辺国とのインフラ整備における開発がメインですが、中国では高等教育政策が国家発展戦略の一環としてもセットで行われており、「一帯一路」に関する教育政策が今どんどん進んでいるところです。国家発展戦略の一環として「一帯一路」に関する教育改革が進む中国恐らく、先ほどのUMAP構想やASEANの高等教育圏と中国が描いている高等教育圏は、完全に質が違うものだと思います。小林 どのように違うのでしょうか。黒田 先ほど「バイラテラル」という表現がありましたが、中国の場合は「中心─周辺」という概念が強いです。胡錦濤政権までの高等教育政策は、先進的で優良な西洋の学問や研究資源を積極的に採り入れて、高等教育の質の向上や競争力を強化することが主でしたが、現政権では中国を一つのモデルとして、中国の教育モデルを積極的に輸出していこうとしています。小林 以前は中国が欧米へ多数留学していたのが、中国の教育を輸出しようという形になっている。黒田 はい。ただ大事なことは、所謂「普通の人々の留学」と国家戦略は全く別物なんです。中国の発展に資する人材育成と教育輸出をうたう国家の思惑とは全く別に、豊かになった中間層が、自らの上昇志向や環境変化志向等を背景に、「ライフスタイル移民」として留学するという流れもあります。オーストラリアのような比較的行きやすい国、かつ環境も良くて、高等教育の質も高いところで高等教育の学位を取る動きですね。オーストラリアの場合は学位を取得するとそれが永住権につながる制度もあるので、将来的な移民を志した留学はあると思います。小林 バイラテラルに対して中心─周辺という言い方をされましたが、それは周辺国に対してどのような影響を与中国は一帯一路構想のもと広い視野で国際影響力を強めている(黒田)

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