カレッジマネジメント215号
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8リクルート カレッジマネジメント215 / Mar. - Apr. 2019えているのでしょうか。黒田 今大きいのは、「一帯一路」に関連したプロジェクトとして、留学生に対する奨学金を多く出していることです。2016年時点で奨学金支給上位は韓国、アメリカといったラインアップでしたが、現在顕著に増えてるいのがタイ、パキスタン。ほかにカザフスタン、ラオス、インドネシア、インド、ロシア等です。中国は現在、そうした国々の学生およそ5万1600人に奨学金を出しています。杉村 一方で、日本で国費奨学金を受けている留学生は1万人弱で、ここ15年ほどほぼ横ばいで増えていません。黒田 昨今の中央政府の文書によると、「一帯一路」構想を推進していくうえで、即戦力となるような職業人材を現地でも育成することが強調されています。また中国では地域研究の専門家、マイナー言語を含めた語学の専門家等、現地の事情に詳しい専門家を育成する取り組みが国内外問わず行われています。大学に地域研究センターが設立され、周辺国の専門家を育成するようなトレーニングプログラムができたり、その一方で現地の大学や企業が中国語のトレーニング用のコースを開設したり、現地の教師教育の研修プログラムを提供するといった動きがあります。小林 そうした動きに対して、周辺国の反応はいかがですか。黒田 国や地域によってかなり反応に温度差はありますので、一概には言えないといったところです。また、アフリカでは孔子学院等が多く設立されています。アフリカの教育の専門家の先生方に聞くと、中国は民主主義の普及という条件をつけずに支援を行うので、どんな政治的背景の国家とも親和的に付き合える。そしてそうした国に中国モデルの教育を打ち出していくことができる。小林 これからアフリカは人口が増えてくる地域ですね。ということは高等教育、アジアにおける中国のパワーは広がっていると捉えて良いのでしょうか。黒田 そう思います。最近研究面での躍進も目覚ましいものがありますので。杉村 中国は奨学金も出し、そして自分たちの教育モデルを輸出して、職業教育を重視した人材育成を行うという、まさに国の発展を支える人材育成を国内外で急速に展開しています。一方、最近アジア全体でよく聞く議論に、教養教育をどういうふうに見直すかという論点があります。シンガポールやマレーシア、タイといった国々が90年代終わりぐらいから民営化の中で急速に発展させたのは、実利的で就職に直結する技術・資格の分野でした。結果的に人文科学系の発展が遅れてしまった。それで十数年たって現在言われているのが、大学の知の基盤を支える一番の根幹の部分が薄くなってきてはいないかという危惧です。日本の大学でもそうですが、今アジア高等教育では、リベラルアーツやリーダーシップ論、クリエイティビティ、クリティカルシンキングといったキーワードがよく出てきます。また、今後AI等を中心としたSociety 5.0においてどういう人材が求められるかということが議論される中で、国を挙げて育てるべき人材はどういう人材であるべきなのかという論点もまた求められています。アジアは人口増と大学進学率の上昇を背景に、大学がエリート養成機関からマス化し、卒業者は多くいるものの、結果的に高学歴者の就職難が起きていて、社会に必要な技術を学んだはずなのに働けない。そうすると、本当に社会に必要な人材は何かを捉える時に、教養教育が重要なのではないかという議論になってくるのです。ある意味原点回帰とも言えるでしょうか。小林 現在中国の大学進学率は43%。もうユニバーサルに近い状況まで来ているということですね。黒田 はい。現在中国では、大学卒業だけではホワイトカラーの望ましい職に就けないので、そういう層が修士を取るために留学するケースが多いです。ただ、先ほどの杉村これからは学生や教育自体の国際モビリティを高めることが高等教育の発展に大きく寄与する(芦沢)

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