カレッジマネジメント216号
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12リクルート カレッジマネジメント216 / May - Jun. 2019Ⅰ成長期ある大学が、最初に新分野の学科を設置した時の、募集定員数と志願者数を起点とする。最初の成功例に追従して、他大学が同分野の学科を設置することで募集定員が増加し、志願者数も拡大していく、マーケットの創造段階。Ⅱ成熟期ある分野で募集ニーズが拡大しているため、後追いで新増設が増えた結果、募集定員の増加率が志願者の増加率を上回り、成長が鈍化する段階。Ⅲ衰退期学科の流行が過ぎ去り、別の分野に志願者が流れ始めているのに、志願倍率の高さから新増設が増え続けることで、かえって志願倍率が下がり、需給バランスが崩れた段階。Ⅳ撤退期志願者の減少により、他分野への改組が始まり、募集定員数が減少し、マーケットから淘汰される段階。Ⅴ再成長予兆期撤退期が続き、募集定員数が減少する中、様々な要因で志願者数が増加する段階。志願者増を見込んだ大学が新増設で定員を増やし、志願者数も増加すれば、再び成長期に入る。それでは実際に、学科系統ごとに、1992年から概ね4年刻みで示したライフサイクル図で、各分野の特徴をご覧頂きたい(図表2-2から2-13)。なお、各系統の名称とどのサイクルにあるかについては図表1に示した。文化・地理・歴史系統(図表2-2、2-2a)分野の中で最大の志願者数を持つのは歴史学。1992年には約8万人だった志願者は2004年には約半数まで減少し、その後再び成長期に入り、2018年には5万3000人まで回復した。募集定員も近年は4000人前後で落ち着いている。1992年時点では志願者数1万6305人だった文化人類学は市場を拡大し、2018年には3万6177人に達した。2016年から再成長予兆期に入っている。教養学は2012年まで右肩上がりの成長期だったが近年は落ち着き、一旦の縮小を経て再成長予兆期に転じた。日本文化学は、2004年以降募集定員は増えていないが、志願者数は6867人から1万7888人と約2.6倍にもなった。芸術・文学・表現系統(図表2-3、2-3a、2-3b)分野の中で最大の志願者数を持つのは外国文学、次いで日本文学であるが、いずれも2012~2016年頃減少傾向だった志願者数が底を打ち、再成長予兆期に入っている。昨今STEAM教育※2等で注目を集める芸術分野の中でも志願倍率5倍のラインを超えるのはデザインのみ。他分野と複合しやすいであろうデザインは単独で見ても再成長予兆期に入っている。美術は定員に大きな変化がなく固定化された市場で志願者数が減少していたが、2016年を機に回復傾向となり、成長期に入った。児童文学は2012年段階で募集停止となっている。数学・物理学・化学系統(図表2-4)数学は1992~2004年まで長く撤退期であったが、2004年を境に盛り返し、2012年、2016年でそれぞれ分岐をはさみ現在成熟期である。物理学と化学は共に2004年までは概ね減少していたが2008年に成長期に転じ、2012年から再び撤退期に入っている。法律・政治・経済系統(図表2-5、2-5a)分析開始の1992年を頂点として市場縮小し、一旦撤退期から再成長予兆期に入り、現在は再び成長期に入っている系統が多い分野。法学は2000年・2012年と転機はあるものの分析開始以降概ね撤退期の減少トレンド。2016→2018年は、定員はほぼ変わらず志願者が約2万人増加する等盛り返している。経済学は1992~2000年の撤退期で志願者数を約4万人減らし、市場規模は半減した。以降は2008年にやや盛り返すも概ね撤退期の軌跡をたどり、2016年に増加トレンドに転じた。似たトレンドを辿っているのが経営学と商学である。総合政策学は分野トレンドとは逆に、1992年から長く成長トレンドにあった。2012年から定員は減少したものの2016年以降再び成長期に入っている。家政・生活系統(図表2-6、2-6a)1992年以降多少の凹凸はあるものの概ね順調な成長期が続いていた栄養・食物学だが、2016→2018年で衰退期に転じた。その他の3系統はいずれも1992年時点の定員・志願者数を頂点として程度の差はあるものの市場縮小の傾向にある。生物系統(図表2-7)生命科学は、1992~2012年まで単独分野のライフサイクル

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