カレッジマネジメント216号
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24リクルート カレッジマネジメント216 / May - Jun. 2019解決力の向上を狙っている。5学部体制となってもこの共通教養が教育の核としてあり、ここを足場にしてそれぞれの専門を深めるのだ。ここで特色ある英語教育としてPractical Englishに関して触れておきたい。後述するように横浜市立大学は、以前から国際性を売りにしてきた。それを具現するために設けられたのがこの科目であり、全学生がTOEFL-ITP®で500点に達することを3年次への進級の要件(医学科は2年次への進級要件)とする野心的な試みである。これを導入した当時、他大学からは無謀と言われ、最低基準に到達できる学生も70%程度しかいなかった。しかし、Practical English Centerを設置し、インストラクターは全て母語を英語としない人向けの英語教授法の資格を有した者とし、加えて教授法の改革、少人数クラスによるコミュニケーション重視の授業等のきめ細やかな指導によって、現在では2年生の約95%が基準点をクリアするまでになった。むしろ、早く基準点に到達してしまうがため、その後のブラッシュアップを怠る者が出てくることに対し、あくまでもPractical Englishはスタートとし、Advanced Practical Englishのクラスを充実させ対応するまでになったという。言うまでもなく横浜市立大学は横浜市によって設立された公立大学であり、法人化後も横浜市との関係は深い。多くの公立大学が設立地域への貢献を基本方針とすることは、同大学でも同様だが、異なるのは横浜という近代化開始からの国際都市に立地している点である。横浜市への地域貢献は必然的にグローバル化へのチャレンジになる。こうした立地を生かして、学部名称に国際を冠し、かつ、それを実体化する活動に力を入れている。大学の国際化を促進することは、必然的に横浜市との連携を高めることになるというメリットがある。2009年に地域貢献センターが設置され、学外ニーズの学内資源とのマッチングを図ってきた。研究という面から横浜ならではの取り組みを挙げれば、横浜市立大学が、マレーシア・タイ・ベトナム・フィリピン・インドネシアの大学との間で形成しているアカデミックコンソーシアムを核にし、横浜市と連携した活動がある。持続可能な社会を目指して、環境・まちづくり・公衆衛生の3つのテーマを掲げて活動し、ここ数年ではJICAの草の根技術協力事業に参画し、マレーシアの都市の課題解決に向けての人材育成や技術協力を行った実績がある。また、新たに設立されたデータサイエンス学部は、横浜市の課題をデータにもとづき分析し教育・研究に役立てるとともに分析結果を横浜市に提供することで、win-winの関係を築こうとしている。興味深い事例として、横浜市の救急車の出動頻度に関する分析がある。現状からは、将来さらなる救急車の出動が予測されるが、それにとどまらず救急通報の時間帯や要請場所、頻度等の分析結果により救急車の将来的な配備体制の検討に生かしていく等の取り組みを進めている。学生の教育という側面からは、学生の各種の地域貢献活動がある。例えば、横浜市にはもともと外国人が多いが、ここ数年急激に増加しており、とりわけフィリピン・ベトナム・ネパールからの流入者が多く、その子どもの教育の手当てが学校現場での大きな課題となっている。日本語でのコミュニケーションが不十分なケースが多いことが学習困難を招き、高校進学を諦め、結果として良好な就労機会に恵まれないという、貧困の再生産が生じる。これを少しでも阻止するために、外国につながりを持つ子どもたちの学習を支援する活動を行っているが、これは国際都市横浜が抱える課題への貢献である。他方で、横浜という地域からの恩恵もある。例えば学生の専門との連携技法の修得問題提起共通教養YCUの教養教育学びを完成させる「専門性」それぞれの学部によって、専門性を追究。自らの目標の実現に向かって学びを完成させます。なお、専門の学修を進めるための教養の基礎を身につけ、スムーズに専門に移行するために、1年次の共通教養での学びは大きなポイントとなります。教養の「核」多面的な視点から世の中の問題点を見つけ(問題提起)、その問題を解決するための手法を身につける(技法の修得)学びを展開。大学で学ぶための基礎となる技法とともに、人間的な成長にも結びつくYCUの教養教育の「核」となる部分です。専門性への「ブリッジ」2年次から始まる専門分野に対応するための基礎知識を身につけ(専門との連携)、専門性への架け橋となる部分です。2年次以降に所属するゼミ・研究室を選択するため、自分の進路を見極める大切な役割も担います。図表3 共通教養の図国際都市横浜と連携した教育・研究

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