カレッジマネジメント216号
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25リクルート カレッジマネジメント216 / May - Jun. 2019インターンシップの実習先として、横浜市をはじめとして区役所や市内の企業からの協力は不可欠である。多くの企業が集積し、国際機関も置かれている横浜の地の利に恵まれ学生の実習先は多いが、それはまた卒業後の学生が横浜という地域に貢献する人材となっていくことにつながるのである。法人化とともに行った改革、また、今回の学部新設や改組は、極めて迅速である。なぜこれほどまでに機動的な改革ができたかといえば、それは、法人化時にいち早くガバナンス改革をしたことによる。即ち、理事長と学長のリーダーシップ権限を強化し、大学運営はトップダウンを基本とし、カリキュラム編成と学生に関してのみ学部の事項とした。人事も全学の人事委員会で決定することとし、学部自治に委ねられていたこれまでの方式を、完全に転換した。加えて、職員の在り方に関しても議論を重ねた。これらの改革は、当然ながら決してスムーズに事が運んだわけではない。とりわけ教員からの反発は強く、喧々諤々の議論が続いたという。こうした思い切った改革を回顧し、窪田学長は、「当時の日本の大学からすれば、学部の自治を縮小したことは例外の部類に属するでしょう。学内の反発は、それはもう大変でした。しかしながら、今後の日本の大学が直面する状況に鑑みると、学部単位で物事を決定する方式では立ち行かなくなることは明白です。時代の流れに敏感に対応して先へ進むことを考えると、必要な改革だったと言えるでしょう」と語る。それとともに、2011年から教員の所属組織を学術院に一本化し、学部と切り離したことも、今回の改革を容易にしたもう1つの要因であろう。全教員は学術院に所属し、そこから学部へ教えに行く。教えに行く学部は1つとは限らない。これは教員という資源の教育・研究における有効利用である。教育という点では、従来であればできなかった、所属学部以外の学部・研究科の教育に従事することができるようになった。研究という点では、領域横断的な研究や全学的な重点課題への対応が可能になる。例えば前述のアカデミックコンソーシアムは2009年に設立されたが、その活動を推進するために2011年には学術院内にグローバル都市協力研究センターを設置した。これは学部・研究科の枠を超えた領域横断的な組織であり、教職員の弾力的な人員配置が可能となる。改革から10年余の歳月は、教員の意識を次第に変化させた。学部に固執していた多くの教員は、全学的な視点で大学の問題を考えるようになったそうだ。優れたリーダーのもとでの機動的な改革ができる体制は、大学の教育力・研究力をさらに高めていくことだろう。さて、改組した3学部の特色はどこにあるのだろう。国際教養学部は、高い外国語運用能力を基盤とし、思考力と実践力を持った学生の育成を掲げている。国際商学部は、グローバル企業で求められる経営管理能力や新事業を創出する企画立案力を身につけたグローバルリーダーを育成することを目標としている。また、海外協定校からの留学生のために英語で日本のビジネスを学べる1年間の交換留学プログラムも設置した。大学の前身である横浜商法学校からの伝統は今でも基盤にある。この「国際」を冠する両学部は、海外留学や海外インターンシップ等、大学や日本から外に出て学ぶことができるプログラムとし、1年次でPractical Englishの基準点をクリアして、2年次での留学を推奨している。それを可能とするため、2年次前期後半の第2クォーターには必修の授業を入れていない。理学部は、多角的なアプローチで生命現象を解明できる学生の育成を目指し、特に医学部との連携を重視している。大学院進学者も多いため、修士課程までの6年一貫制、あるいは、優秀な者は5年間で修士課程までを修了できるプログラムも編成した。医学部は最も改革が困難な組織といわれることが多いが、ここもアメリカ型の臨床実習重視の医学教育を導入し、学生の海外派遣にも力を入れている。それぞれの学部がそれぞれの伝統に立脚しつつ、国際を1つのキーワードとして新たなミッションを掲げ、教育プログラムを編成している。横浜と共に歩みつつグローバルなチャレンジという目標の達成はそう遠くはないように思われる。(吉田 文 早稲田大学教授)学部自治からの転換で機動的な改革を推進新たなるミッションのもとで特集 学部・学科トレンド 2019
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