カレッジマネジメント216号
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32リクルート カレッジマネジメント216 / May - Jun. 2019中等教育専攻(60人)を設けている。大学院教育学研究科(修士課程。入学定員5人)の設置もこの時だ。2019年度は芸術学部にゲーム・アプリケーションコースを展開し、入学定員は190人まで増加した(びわこ成蹊スポーツ大学も、過去7年で学部入学定員は270人から360人まで増加)。短期間に、これだけの改組と新増設を行いながら、大阪成蹊大学の入学者数は2012年から増加に転じ、2014年度以降は入学定員も充足し続けている。志願者数も急拡大、2018年度には2000人を超えた。なぜ打つ手がことごとく成功しているのか。石井理事長は、他大学の「後追い」で新しい学部・学科を作ってきたと言って謙遜するが、確かな市場調査に裏付けられ、理にかなった判断に、結果がついてきたものと見える。大阪市内はもとより、吹田市や、茨木市、高槻市等大阪府北部の北摂地域も人口が多く、人口密度も高い。教育熱心な土地柄でもある。ここから進学者を確実に迎え入れるために、近隣の高校を定期的に訪ね、生徒の希望進学先の動向について聞き取りを重ねてきた。同時に、大阪府南部にある他の芸術大学とは棲み分けを図る。他方、併設の女子高校の生徒には年に2回、進路希望の調査を行う。専願の入学者を確保する狙いもある。だがむしろ、在学中の計6回に及ぶ調査を基礎に、彼女たちが進学を希望する分野から、高校生の進学トレンドを知り、学部・学科の新設、短大の改組や4年制化、定員増を行うためのデータとしている。高校からの内部進学率は低い時で26%ほどだったが、今は50%を超えた。女子学生比率は、大阪成蹊大学が60%、短大が97%である事実からも、最も身近にいる併設校の生徒の声こそが、大学・短大の発展戦略を考えるうえで極めて重要な意味を持つ。「早く動く」ことも重要だ。学科の改組や新増設、定員増等の構想が具体化するまでは2週間ほどである。短い時は1日で決めたこともある。中期計画も、毎月見直すという。時おりほかの学園が、早々に短大を「店じまい」して4大化しても、うまくいかない場合を耳にする。そうした分野の短大進学需要の受け皿として、併設短大の既設分野を大切にしながら改組、並行して4年制でも設置し、女子の4大志向が高まれば徐々に拡大を行う。併設校の強さも学園の足腰を支えている。大阪成蹊短期大学の入学者数は、全国の私立短大の中で第3位の規模を誇る。2009年度に690人だった入学定員は、2019年度現在で760人へと増えたが、学生募集は堅調だ。2012年度以降は定員割れも経験していない。大阪府では、女子の短大進学率が1995年度から急減したが、2002年度以降は減少ペースが鈍化し、2012年度からはさらに鈍化した(宮城や福島、長崎、沖縄等、2012年度以降に女子の短大進学率が上昇傾向の県さえある)。底堅い短期高等教育への進学需要には、うまく対応してきた。さらに、大阪成蹊女子高等学校は規模も大きく、全国の女子高校の中で入学者数は最も多い。大学への内部進学図2 大阪成蹊学園 学部・学科の変更学園の再生を可能にした進学トレンドの分析と、強みを生かす戦略決定2009年度大阪成蹊大学現代経営情報学部 現代経営情報学科入学定員 200人芸術学部 情報デザイン学科 環境デザイン学科・美術学科入学定員 220人びわこ成蹊スポーツ大学スポーツ学部 生涯スポーツ学科 競技スポーツ学科入学定員 270人大阪成蹊短期大学総合生活学科 生活デザインコース、 食物コース、栄養コース児童教育学科 初等教育学専攻・幼児教育学専攻観光学科表現文化学科経営会計学科入学定員(短大計) 690人大阪成蹊女子高等学校普通科 キャリア進学コース、幼児教育コース、 美術・イラスト・アニメーションコース、 スポーツコース募集定員 240人こみち幼稚園 募集定員 90人学園合計入学・募集定員計 1,710人収容定員 5,130人  2019年度マネジメント学部 マネジメント学科 スポーツマネジメント学科 国際観光ビジネス学科入学定員 240人芸術学部 造形芸術学科入学定員 190人教育学部 教育学科 初等教育専攻・中等教育専攻入学定員 180人大阪成蹊大学大学院 教育学研究科入学定員 5人スポーツ学部 スポーツ学科入学定員 360人びわこ成蹊スポーツ大学大学院 スポーツ学研究科入学定員 10人生活デザイン学科調理・製菓学科栄養学科幼児教育学科観光学科グローバルコミュニケーション学科経営会計学科入学定員(短大計) 760人普通科 キャリア特進コース、キャリア進学コース、 幼児教育コース、スポーツコース美術科 アート・イラスト・アニメーションコース募集定員 360人こみち幼稚園 募集定員 90人入学・募集定員計 2,195人収容定員 6,780人

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