カレッジマネジメント216号
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33リクルート カレッジマネジメント216 / May - Jun. 2019率を高めて、入学者を安定的に確保できることのメリットは大きい。その高校も、石井理事長就任前の2009年は入学者218名であったが、美術科やキャリア特進コースの設置等、様々な改革を行い、2018年の入学者は505名と9年間で2.3倍に増加してきた。きめ細かい市場調査と、迅速な意思決定。それを支える女子高等学校・短期大学という基盤。これらはほかの学園も見習いたい点だろう。加えて、大阪成蹊大学の再生を強力に後押ししたのは、全学的な教学改革の推進であった。3年前から本格的に取り組んできた教学改革。今では大学、短期大学のそれぞれに20のプロジェクトがあり、若手から中堅、ベテランまで多くの教員・職員が参画する。また、全学的な教学事項を議論し、決定する教学改革会議を開催。幹部教職員及びプロジェクトのメンバーを含む総勢100人が毎月一同に会する。初年次教育やキャリア教育、教養教育及び専門教育のカリキュラムの抜本的な改革を行うとともに、全授業でのアクティブラーニングを実現。また、シラバスや成績評価、学外連携の推進、ゼミでの研究指導等の、様々な手引きやガイドラインを整備し、年間を通じてFD研修会を開催することで、教育力を高めている。また、新規の教育を企画する学内文化を重視し、プレゼンテーションや英語スピーチコンテスト等様々なコンペティションを教職員が企画するほか、海外で専門性を高めるグローバル・アクティブ・ラーニングプログラムを毎年開発。予算をつけ、入賞者や参加者への奨学金を充実している。一連の改革は、単に周知に留まらず、目的を全教職員が共有するとともに、実施状況の組織的なチェックと改善指導のプロセスを明確にし、徹底することを重視している。また各プロジェクトでの成果検証は数値ベースだ。こうした改革の結果、学生の授業満足度の平均は4.1点(5段階評価)、1年生の授業出席率は93.3%と高い水準となるほか、入学後1年以内退学者は5年間で半減。正課内外での学生の活躍も顕著になってきた。何より、授業内外で、授業や課題に取り組む学生の顔つきが変わってきた。こうした教育改革の姿勢と、4年間を通じた学生の成長に対する評価が、志願者の急激な伸びにつながっている。首尾よく安定的な発展軌道の上を歩み出した今、学園はどこへ向かうのか。まず2020年度から、マネジメント学部マネジメント学科を経営学部経営学科に名称変更するとともに、40人の定員増を行い、公共政策コースを新設する予定である※1。国際観光ビジネス学科も20人の定員増、教育学部教育学科初等教育専攻も20人の定員増を行う※1(短期大学では計80人の定員減)。この3月には、新校舎「グローバル館」も竣工となった。相川キャンパスの在学者の総数が増えるにつれて、さらに新しい校舎の建設も視野に入ってくる。大阪成蹊学園は、毎年のように大小様々な改組や定員増を行ってきた。外部からは一見、目まぐるしい動きに見える。だが実際には、地道な市場調査を積み重ねつつ、「常に変化している」状況を作り出しているのであり、その手法は非常に手堅い。本来やるべきことを、きめ細かく、着実に妥協なくやり遂げる。過去10年の拡大を基礎に、さらに幅を広げ、大きく飛躍する段階へと差し掛かった。改革をしていない大学は改革をするのが怖い、改革をしている大学は改革を止めるのが怖い。これが、5年経つと大きな差になる。教学においても、ガバナンスにおいても、職員力にも大きな違いが出てくる。もっとも、大阪府の18歳人口の動向は予断を許さない。2017年度をピークに再び減り始め、2021年度には7万9549人となる。この減少期は2024年度の7万2724人(2018年度現在の中学校1年生)まで続く(2018年度現在の小学校1年生から中学校3年生までの児童・生徒数からの推計。義務教育学校や中等教育学校の在学者を含む)。2017年度からの7年間で、15.1%減という計算だ※2。それに今、どう備えるかが、学園の今後を占う重要なポイントとなろう。次の一手が注目される。(朴澤泰男 国立教育政策研究所高等教育研究部・総括研究官、編集部)数値ベースで教学改革を検証注目される次の一手特集 学部・学科トレンド 2019※1収容定員変更認可申請中※2その後は2030年度の7万1415人まで、ほぼ横ばいで推移する。なお2017~24年度の間、大阪市は2万2789人から13.6%減、堺市は7804人から8.7%減、両市を除く大阪府内では5万5094人から16.7%減と見込まれる(以上は中学校所在地ベースの値であることに注意)。
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