カレッジマネジメント216号
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34リクルート カレッジマネジメント216 / May - Jun. 2019大学の学部・学科は、企業に置き換えると商品ラインアップに当たると考えらえる。商品(製品)には、市場に商品(製品)が投入されてから売れなくなるまで、Ⅰ)導入期⇒Ⅱ)成長期⇒Ⅲ)成熟期⇒Ⅳ)衰退期という4つのプロセスがあると言われている。これを人生になぞられて、「プロダクト・ライフサイクル」と呼んでいる。カレッジマネジメントでは、この理論を大学の学部・学科に応用して、学部・学科のライフサイクル図を使って、学部・学科の栄枯盛衰のマーケットトレンドを整理している(特集P.6図表2-1参照)。本誌における、学部・学科のライフサイクルは、Ⅰ)成長期⇒Ⅱ)成熟期⇒Ⅲ)衰退期⇒Ⅳ)撤退期⇒Ⅴ)再成長予兆期という5つのプロセスである。企業の商品(製品)と学部・学科は異なるというご意見もあると思うが、一つのマーケットの捉え方としてご覧頂きたい。大学の学部名称(学士の学位に付記する専攻分野の名称)は、1991年まで29種類であった。これが、同年の大学設置基準の大綱化によって自由化された結果、2010年には既に700種類を超え、現在では800種類近くになっていると言われている。これは、社会環境が大きく変化する中で、大学教育の役割が拡大し、従来の学問分野では対応できない領域に対応するという側面があったと考えられる。その一方で、1992年の205万人をピークに減少する18歳人口への対応、つまり経営的な観点から新たな領域へ対応することで、大学進学市場を開拓するという側面があったことは否めないだろう。その効果もあってか、18歳人口が減少するなかでも大学進学率は上昇し、特に私立大学を中心にして、多様な進学者の受け皿となっていったと言えるのではないだろうか。このように考えると、大学の学部・学科が、18歳マーケットに対してどのようなトレンドをたどってきたのか、プロダクト・ライフサイクルとして分析してみるのも意味があるのではないか。本誌では、設置基準の大綱化以降の1992年から長期にわたって、学部・学科のライフサイクルを分析してきた。そのトレンドを見ると、まさに社会環境の変化が見えてくる。影響を受けるのは大きく2点である。1つは景気動向だ。景気が悪くなり、大卒求人状況が悪化すると、景気回復で学部・学科トレンドに変化、「グローバル化」「第4次産業革命」「少子高齢化」で新領域へ対応リクルート進学総研 所長リクルート『カレッジマネジメント』編集長小林 浩 編集長の視点

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