カレッジマネジメント216号
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54リクルート カレッジマネジメント216 / May - Jun. 2019育科目に移行した。ただ、この深い取り組みを、全ての学生に提供するのは難しい。全体の底上げには、浅くとも広く実施できるものが必要だ。そのような全体底上げを担保するのが、2013年に全学必修化した職場見学だ。1年生は社会参画入門と社会参画実習1、2年生は社会参画応用と実習2、という2年間のキャリア教育・人間力育成プログラムがあり、その中で各学年最低2回の職場見学を行うこととなった。1年次前期の社会参画入門では、企業の現場を見せてもらい話を聞くというシンプルなもので、時間も半日と短いが、全員にとにかく地域企業を見せることが主眼だ。「2年目は事前に課題を準備して行く。3年次のインターンシップでは、言われて行くのではなく、自分にとっていいところを選ぶ形です」(菅学長)。現在は、広く浅くの社会参画科目群と、狭く深くのCOCとの両輪が定着している。これは正課内での「教養」と「専門」との両輪だが、「正課での授業」と、「正課外のプロジェクト」の2つもまた、パラレルとなっている。菅学長は「『教育の質』を問われるとき、正課の科目を指すことが多い。しかし、自由な時間を有意義に過ごすための『正課外プロジェクト』が主体性を引き出すものだと思います」と、正課外プロジェクトの意義を指摘する。高見大介人間力育成センター長(工学部助教)は「我々教員は、学生たちの10年後の幸せを考えなければいけない」と痛感すると言う。「生きていくためにはカセギとツトメが必要。例えば、優良な企業に就職しても、『この仕事は誰でもできますよ、つまりあなたでなくてもできますよ』という仕事の振り方では、自己肯定感は育まれない。『君がいてよかった』とか、『自分は社会のここを担っている』という感覚を得るのは、企業だけだと難しい時代になってきたのではないでしょうか。10年20年と続く幸せのためには、例えば月曜日から金曜日まで企業で働き、週末は、地元の少年野球で教え、『個として必要とされる』という『パラレルキャリア』、カセギとツトメ、二足の草鞋を履く生き方が必要だと感じ始めました」(高見センター長)。正課と正課外とがパラレルであることは、「パラレルキャリア」を見据えたものでもあるというわけだ。「『カセギ』にあたるのは授業。もう一方で、『ツトメ』にあたる、社会において必要とされる存在になる経験を学生時代に送れば、社会人になった後も色々な形で自己肯定感を感じられるタイミングが出てくるだろうと思います。実際、正課の授業も正課外もパラレルで頑張った卒業生達が地域の活動に参加しています」(高見センター長)。菅学長は、最近ボランティアに若い人が集まる傾向と結び付けてこう言う。「今の学生は、何か人のため、社会のために役立ちたいと思っている。しかし、関わり方が分からない。だからこそ、教職員と共に地域に訪れ、様々な魅力や課題がある実態を見せるのです。活動をしてみると面白いじゃないか、と目の色が変わってくる。それが人間力になるのです」。取り組みの成果を「量(数)」と「質」で問うと、「数のほうは、志願者数がV字回復。学生のレベルアップも同時にできていると思います」(吉村教授)という明確な答えが返ってきた。「一番大きかったのはCOCで、学生が地域に行くことで地域や企業、高校生にも見てもらえます。こんなに成長しましたと数字で示す以上に、こんな学生になるんだ、と地域の中で見てもらうことのほうが効果がある。学生が出向く『地域』の多くは県内のため、県内の高校からの進学者増という成果にもつながっている。学生の成長に関していえば、自分の考えを持ち、それを伝えるコミュニケーションの力もついています」(吉村教授)。これからの課題は、「人間力」のその先だ。菅学長は、「我々にしかできない教育が地域での実践型教育を通した『人間力』育成ですが、2019年度から中長期計画の第3期に入り、その実現のために『先生方の専門研究を表に出した教育』を考えている」と言う。「本学は工学部と経営経済学部ですから、ものづくりと実体経済です。それは大学だけではできません。だから企業の皆さんも一緒に教育してくださいと。原点に還る『産学一致』です。この原点を変えてはいけないと思っています」(菅学長)。「パラレルキャリア」10年後の幸せを考えるものづくりと実体経済に貢献できる産学一致教育を(角方正幸 リアセックキャリア総合研究所 所長)

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