カレッジマネジメント216号
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58大学はより良い方向に向かっているのだろうか。大学関係者の多くが率直に抱く疑問ではなかろうか。改革のあり方を原点に立ち返って問い直すことも必要と思われるが、速度が増す社会の変化や矢継ぎ早に示される高等教育政策の前に、立ち止まって省察することが許される状況にはない。本連載でも、「現場と事実を直視し、改革の進め方を問い直す」(本誌第196号、2016年1月)というタイトルを掲げ、「社会の変化についてゆけない大学」は本当か、教職員は大学の変化をどう捉えているのか、という問いかけを行うとともに、教員の多忙化に伴う教育研究基盤の弱体化等の問題を指摘しながら、現場で生じている実際の変化を丁寧に見極めたうえで、中身を変える改革が必要であることを訴えてきた。確かに大学は様々な面で変わりつつある。学長のリーダーシップ、副学長をはじめとする補佐体制、教育の質保証、FD・SD、IR等の重要性が広く理解されるようになり、学生支援やキャリア支援の充実、受入・派遣留学生の増加をはじめとする国際化、産学連携、社会・地域貢献も進みつつある。しかしながら、教育改革を例にとっても、新たな試みが一部の学部にとどまり、大学全体に広がらない、あるいは同じ学部でも熱心に取り組むのは一部の教員であり学部全体に広がらない、という問題は多くの大学が抱えていると思われる。また、求められる改革の程度や速度も置かれた状況によりそれぞれに異なるはずである。教育の質の向上や経営の高度化が持続する状態を実現するための改革もあるし、生き残りを賭けた「破壊的イノベーション」が必要な場合もある。自分達の大学に真に必要な改革とは何か。そのことが明確にされ、学内で十分に共有されているだろうか。さらに、本当に変えるべき部分は変わらず、逆にそれぞれの大学が持つ良さや個性が失われつつあるのではないか。そのような危惧を抱く大学関係者も少なくないであろう。国や社会が促す改革は、画一的なものにならざるを得ない面があり、その時々の目新しい概念や方法が本質を見極めないまま、新たな政策に盛り込まれがちである。大学は、これらの要請と自校の状況を突き合わせ、何を目指して、どこをどのように変えるべきかを十分に検討したうえで、組織内の意識をすり合わせ、改革に取り組まなければならない。そうでなければ、大学をより良い方向に向かわせることはできない。例えば、自己点検・評価や認証評価を通して教育研究水準は実際にどの程度向上しているのだろうか。3つのポリシーは、入学希望者、学生、保護者、高等学校関係者及び社会にどれだけ理解されているのだろうか。そして、大学を強くする「大学経営改革」大学はより良い方向に向かっているのだろうか吉武博通 公立大学法人首都大学東京 理事リクルート カレッジマネジメント216 / May - Jun. 2019──あらためて「改革」の意味と方法を問い直す82画一的な改革では真に必要な変革は実現できない「人と組織に対する理解」を欠いた改革

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