カレッジマネジメント216号
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61リクルート カレッジマネジメント216 / May - Jun. 2019かっているのに実践できない医学校の教授陣の事例、大学の意思決定過程で隅に追いやられている状態から脱したいと考える大学図書館の司書たちの例等も紹介されている。そして、「本当の変化と成長を促したければ、リーダー個人の姿勢と組織文化が発達志向である必要がある」とし、成長を促すリーダーシップとして、①大人になっても成長できるという前提に立つ②適切な学習方法を採用する③誰もが内に秘めている成長への欲求をはぐくむ④本当の変革には時間がかかることを覚悟する⑤感情が重要な役割を担っていることを認識する⑥考え方と行動のどちらも変えるべきだと理解する⑦メンバーにとって安全な場を用意するという7つの要素を挙げている。組織開発の手法やキーガンらが開発した方法を用いて変革に取り組もうとすれば、構成員の協力は不可欠であり、専門家の支援も必要になるだろう。テキスト通りに進めることは容易なことではない。大学にとって重要かつ現実的な方法は、それぞれの部門において変革を主導できるリーダーを養成すること、組織開発や組織変革に関する専門的な知識・スキルを持つスタッフを、改革を担当する部署(例えば、人事、総務、企画等)に配置して、各部門の取り組みを支援すること、であろう。そのためにも、トップ自身が組織開発や組織変革の根底にある考え方や価値観を十分に理解し、改革の目的を明らかにしたうえで、息の長い取り組みとして根づかせるという強い意志を持ち続ける必要がある。既述のとおり、改革を進めても無関心や非協力を貫く構成員、求められる能力を発揮できない構成員が一定程度存在するのはいずれの組織でも同じである。組織の人間的側面を重視した変革を進めるなかで、これらの構成員の意識が変わり、自ら能力を高めようと努力するようになることが望ましいが、限界もある。報酬を得て仕事に従事している以上、結果が問われるのは当然であり、再三の働きかけにも拘わらず態度や行動が変わらず、結果も示せなければ、人事面で厳しい措置を講じる必要も生じてくる。わが国では、企業においても降格や個別解雇は懲戒的なものを除くと行われにくいと言われているが、そのことが微温的な風土を生み出した面もある。大学においてはその傾向がさらに強いように思われる。厳しさあっての温かさでなければ、競争力を高めることも、生き残ることも難しくなるだろう。そのためには、教員・職員を問わず、大学という機関の特性を踏まえた、自校にふさわしい評価を確立するとともに、人事機能を高度化させていく必要がある。人事管理の世界では、職能資格制度や職務等級制度から役割等級制度に移行する企業が増えてきている。役職や仕事に求められる役割の大きさに応じて等級を設定し、その役割を担当する従業員の報酬を決定する制度だが、役割を果たせなければ等級を下げることも制度上は可能となる。努力や貢献に応じた役割付与と処遇を徹底することは活力ある健全な組織を作るための基本である。本稿では、組織の人間的側面に着目した変革を中心に論じてきたが、もう一つの柱として、意思決定、仕事の仕方、情報共有等、組織と業務の構造的見直しが不可欠なことは言うまでもない。働き方改革も待ったなしの課題でもある。組織の人間的側面に着目した変革と組織・業務の構造的見直しの両方を徹底することなく、教育改革に取り組んだとしても、一つひとつの施策が深く広く根を張ることは難しい。あらためて「改革」の意味と方法を問い直し、自校の将来、高等教育の未来を拓く真の改革を目指してほしいと願う。【参考文献】中村和彦『入門 組織開発 活き活きと働ける職場をつくる』光文社、2015年成長を促すリーダーシップの7つの要素努力や貢献に応じた役割付与と処遇の徹底

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