カレッジマネジメント217号
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10リクルート カレッジマネジメント217 / Jul. - Aug. 2019育をし、社会に説明するのだという課題は以前からあり、表現こそ違えども常に指摘され続けてきたということを認識しておく必要があると思います。筑波大学にいたとき、教員データベースを作って試行的に教員評価を行いました。約1600人の教員に呼びかけ、任意参加で論文業績や学会発表等の情報を入力してもらい、活動実績を可視化しました。研究をしていない人は自ずと見えてくるわけなので、抵抗もあると思っていたのですが、90%以上の教員がデータを入力し試行評価に参加しました。人文系の教員のなかには、初めて自分を振り返ることができたと言う人もいました。コーポレートガバナンスにおいてディスクロージャーは大事だといわれていますが、同じように大学のなかも「さらす」状況をつくり、上から言われるのではなく、やらなければいけないという状況を作っていくことが、大事だと感じます。司会 企業が社外取締役を入れているように、大学では、外部の視点として学外理事を入れようとしていますが。北城 学外理事を入れることは賛成ですが、やはり鍵となるのは、学長自身がどういう大学運営をするかということであって、学外理事を入れれば大学が変わるというほど簡単ではないと思います。学生が集まってくる大学は、自分達から変えていこうという危機意識がない限り、外からの要請によって変わるのは非常に難しいことです。特に、日本の多くの私立大学の教員は教育研究の成果によって評価されることはなく、処遇にも反映されません。そういうなかにおいて、社会からの要請に応えて自ら変わろうという意識は生まれにくいでしょう。大石 私も外部理事が増えたからといって、それだけでは変わらないと思います。一方、教員に対しては本学では評価制度を導入しました。全員を評価します。ボーナスといわれる一時金なども、学科の成果で変わるという制度です。北城 それが実現できた大学は、私学では非常に少ないと思います。学長、理事長が教職員の投票で選ばれる大学において評価制度を導入するのは反対も想定されるので非常に難しく、しかもその学長は2期目で選ばれないかもしれない。ですから、改革を進めるためには、教員評価をいかに実行していくか、処遇にどう反映していくかということも、実はガバナンスとともに大事なのです。大石 本学でも評価制度を入れようとした際に反対は出ましたが、時間をかけて、審議会だったり協議会で話し、教職員組合とも何回も話しをして、その必要性を説いていきました。すると理解を示してくれる方が出てきて、そこから周りにもその意義を伝えてもらったり、自分から研究室に行って話しをしたりして、1年半ぐらいかけて理解を仰ぎ、実現しました。司会 やはり大学は人が資源なので、先生方が改革の目的や主旨を理解し、納得する状況を作ることが非常に重要ということですね。人といかにコミュニケーションし、どう巻き込むかという組織マネジメントのあり方が改革を推進していくうえでのポイントであると言えそうですね。北城 あるとき教員から、企業では何でもトップダウンで、社長が「右」と言えば全員が右に向くんでしょうと聞かれて少し奇異に感じたことがあります。実際にはそんなことはなく、社員に向けてなぜ右に行かなければいけないかきちんと説明した結果、最終的にみんなが右に動くよう経営をするわけで、そういったコミュニケーションが必要なのは、大学も企業も同じだと思います。優れた人事評価や人材の育成、あるいはコミュニケーションを明確に行わないと、企業は倒産してしまうので非常に努力しています。吉武 現場の一人ひとりに理解してもらうために、組織の管理職が出向いていって話し合うといったことは、企業では当たり前のようにやっています。人がコミュニケーションしながら何かを変えていくこと、作り上げていくことは、本来は大学も企業も共通するのですが、そこが正しく理解されてないことは本当に残念だと思います。よく、企業は本当にトップダウンで物事が決まり、成果が数字で測れると言われますが、企業で社員の業績学長のリーダーシップを支える学部長・学科長と職員のマネジメント能力向上で改革は進む人材の育成

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