カレッジマネジメント217号
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11リクルート カレッジマネジメント217 / Jul. - Aug. 2019が数値でクリアに出てくることなんて稀ですし、トップダウンで全部社長が決めるなんてこともない。大学も、教員一人ひとりと接し、先生達のモチベーションに火を着けるといったコミュニケーションの積み重ねが大事だと思います。これからの大学においてそのコミュニケーションを担うのは、学部長・学科長ではないかと思います。学長の打ち出した方針に対して、学部長クラスまでは理解されることが今は多いんです。ところが、学部長が現場に戻ったとき、組織の変革を教員達とどう話し合い、進めていくかという方法が分からない。これからの課題は、学部長・学科長のマネジメント能力をいかにして高めていくか。企業で培われてきたマネジメントの考え方やフィロソフィーといったものが役立つのではないかと思っています。北城 学長も学部長も、一律に「企業と大学は違う」ということで片づけてしまうのではなく、特に人事評価やコミュニケーションという点は学ぶべきではないかと思います。もちろん、企業に比べて大学は成果がすぐに分からない組織運営であるという難しさがあるのですが、それでもリーダーが、危機感とともになぜ今変わらなければいけないかという背景についてしっかり説得し、そのうえで自分達の大学をどう運営していくんだという方針を出し、さらに学部長を育成していくことが必要なのです。しかし、人材を育てるうえで、日本の大学の問題の一つは、学科長から学部長になり、学部長から副学長になるといったキャリアがないことがあります。この人を意識的に将来の組織運営の幹部として育てようという意識や仕組みがないんです。企業の場合には、優れたリーダーになりそうな人を課長や部長に登用し、将来は事業部長や役員に育てるというキャリアがある。大学の場合、「教授を目指す」という考え方はあっても、「学部長になる」ことを意識的に行う仕組みはありません。学長が組織運営の鍵として学部長を選び、評価し、場合によっては交代を命じるという意識改革が必要でしょう。大石 教員そのものに危機感の醸成をしないと変わらないのと同時に、「職員をどう育てるか」ということも非常に重要だと私は考えています。本学では、事務職員が教員を巻き込みながら組織をマネジメントしていく力をつけられるように力を注いでいて、事務職員の研修も強化しています。司会 人口減少が地域によってはかなり激しく起きて、厳しい状況にある大学も増えています。そうすると経営力は非常に重要になってきますね。吉武 経営力というのは、経営資源の獲得と高度利用だと思います。経営資源、つまり人・もの・金・情報のなかで、一番重要なのはお金だと思います。今グローバル化も、少人数教育も、アクティブラーニングも、あるいは多様な学生の受け入れについても、高等教育にはお金がかかり、いくらあっても足りない状況で、有力校であってもその状況は変わりありません。そういったお金をいかに獲得するのかということに加え、獲得したからにはその使途をステークホルダーに対して明確に可視化し良いガバナンスがあって、初めていいマネジメントがある。経営力というのは、経営資源の獲得と高度利用。そのうえで社会への透明性を高めることが求められる(吉武氏)単年のキャッシュフローに依存しない運用や投資が欠かせなくなる大学の経営力特集 大学改革と新時代のガバナンス

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