カレッジマネジメント217号
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12リクルート カレッジマネジメント217 / Jul. - Aug. 2019て説明する責任があります。もう一つ高度に利用することが難しいのは、人的資源です。雇った教職員に活躍していただき、その人のキャリアアップも実現し、同時に大学や社会への貢献にもつながるという循環を作っていくということは非常に難しいことですが、良い経営資源を生かして教育や研究を行い、大学全体をマネジメントすることが今まで以上に重要になってくることだと思います。北城 リーダーである理事長と学長が分かれているとき、しばしば「経営は理事長、教育・研究は学長」と言われますが、私はそれはおかしいのではないかと思っています。なぜなら、どういう教育・研究をして、そこにどのように資金を使うかということは、大学経営そのものなのです。そういう意味では私は理事長と学長が分かれているとしても、一体で見ていくべきだと考えています。また、資金に関して言うと、アメリカの大学の場合、基金を運用してその利益で良い教育をするということを戦略的に行っています。ICUは持っていた土地を売却して基金をつくり、積極的に運用して利益を出してきました。そして、過去10年間の平均の運用益を大学に拠出して良い教育に活用するということを戦略として理事会で決めています。今後の日本において、単年度の授業料だけで質の高い教育をやり続けることは非常に難しいと思いますし、少なくとも世界のなかで競争はできないだろうと思います。大石 本学の場合は、学生の納付金と文科省からの補助金で経営収支では赤字にはなってはいませんが、工学系の大学の場合は設備投資がかかるので、単年のキャッシュフローだけでは実際には非常に難しいですね。ただ、かつて手を打ってこなかったことによる負のスパイラルから反転しようという今、未来に向けた投資として理事長として判断し、過去60年間にかけたことがないほどの投資を決定し、寝屋川キャンパスのフルリニューアルに向けて動いています。司会 そういった未来に向けたミッションやビジョンと計画があり、それらを達成するための経営の「仕組み」の在り方は極めて重要だと思いますが。吉武 ミッションやビジョンの達成において、もちろん「仕組み」や「仕掛け」がどうあるかということは大事ですが、それだけではなく、いわゆる独自の「見識」のようなものが必要なのではないかと思っています。ICUの場合は、基金があるだけでなく、運用リスクをとってでも、大学の特色を明確にし、教育の質を高めていくために資金を生み出そうという見識のある判断を理事会がしていると思います。その結果、ICUは偏差値序列とは異なる独自のポジションを確立している数少ない大学になっていると思います。見識ある理事会、あるいは見識ある理事長や学長のマネジメント力がどうしたら培われるのか、よく学ぶ必要があると思います。北城 経営がうまくいくためには、仕組みと人事、両方

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